シーズン4回目は、いよいよお待ちかね、学識の「出るところ、出ないところ」について書きます。
頻出分野と押さえておくべき所を書いたので、是非ご活用ください。

これまでの合格体験記

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今までの話を踏まえて、試験概要をまとめた図を貼っておきます。
今回話をするのは、赤丸で囲んだ「学識」の頻出分野についてです。
khk-4


検定における「学識」。出るところ、出ないところ

全体を通しての傾向
表の数値を覚える必要はありませんでした。


学識の分野一覧
以下に示す6つの分野から成っています。
各々10~20ページ程度と、なかなかのボリュームです。

① 気体の一般的性質
② 気体の熱力学
③ 気体の化学反応
④ 燃焼・爆発
⑤ 毒性ガス
⑥ ガス各論


各分野における、出る・出ないの視点での分析

以下の3つの視点から、学識における各分野の出題傾向を分析しました。

・検定における講師の「出る、出ない」のアドバイス
・過去問を12年分解いた際の傾向
・実際の検定試験を受けた際の感覚

講師による客観的な視点と、10年以上の過去問を隅から隅まで解いた実績が合わさっているので、ある程度の精度は保証できます。


評価基準
◎:最頻出。原理原則からしっかり勉強して、何が何でも押さえるべし。
○:頻出。ここまでは解けるレベルにしておかないと、正答率6割には到達できないでしょう。
△:あまり出ない。まずはざっくりと学び、余裕があれば深めましょう。
×:全く出ない。スルー推奨です。

それでは、テキストに記載の順番に、それぞれの出題頻度・どこを押さえるべきかを見ていきましょう。

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①気体の一般的性質

1-1. 理想気体の性質 ○

ボイルの法則、シャルルの法則、ボイルシャルルの法則、理想気体の状態方程式は必須です。
熱容量は、モル熱容量およびマイヤーの関係が頻出です。
混合気体に関しては、ドルトンの法則は押さえましょう。


1-2. 実在気体の性質 △

実在気体のpVT関係の図(p-V関係およびp-T関係)は理解するようにしましょう。
実在気体の状態方程式は、検定では出題時に式が与えられるので、式を暗記する必要はありません。
ファンデルワールス式を理解しておけば十分で、その後の複雑な式(レドリッヒ-ウォン式やらビリアル状態方程式やら)はノータッチで構いません。
対応状態原理は押さえておくべきです。一般化Z線図の利用法、アマガーとケイの方法は時たま出ます。


1-3. 気体と液体の平衡と諸性質○

高圧気液平衡および逆行凝縮現象は、図をしっかりと理解しましょう。
フガシティー云々は、一度証明を追って「こんな考え方か」と把握する程度で十分です。
ラウールの法則およびヘンリーの法則は、計算問題で頻出なので、式をさっと書き出せるようにしておきましょう。

蒸気圧、沸点、気化熱に関しては、用語を押さえておくようにしましょう。
記述することが時たまありますし、仕事に役立ちます。

体膨張係数と圧縮率は、近年は出題傾向から外れているようです。余裕があれば取り組む程度で良いと思います。


②気体の熱力学 ◎

原理原則の理解が無いと解けない分野です。
ここは特に、習熟を深めるようにしましょう。

2-1. エネルギー保存則

2-2. 熱力学の第二法則

2-3. エントロピー

この3分野は、式自体はカンタンなのですが、それをどう使うかが問われます。
式を暗記するのはすごく簡単なので、どうしても油断してしまうので注意が必要です。
式を一通りなぞったら、すぐさま例題や過去問を解いてみて、式の使い方を体得するようにしましょう。

2-4. 自由エネルギーと化学ポテンシャル ○

検定レベルでは、ギブズエネルギーと化学ポテンシャルを押さえておけば十分です。
ヘルムホイツエネルギー、フガシティー、活量、蒸気圧の温度依存性などは、余裕がなければスルーしましょう。
余裕があれば、クラウジウス-クラペイロンの式あたりは押さえておくといいでしょう。


2-5. 気体の状態変化 ◎

気体が行う仕事は、最頻出項目です。
これも問題を解く中で、式の使い方を体得していきましょう。

等温変化、定圧変化、定容変化、可逆断熱時の仕事については、式をさっと出せるようトレーニングしましょう。
特に可逆断熱時の仕事は頻出なので、断熱時のpVTの関係を含めて、丸暗記しておきましょう。

ポリトロープ変化は出ません。


2-6. カルノーサイクル○

図に従って「A→B, B→Cのときに行った仕事、pやVの変化量を求めよ」といった形で出題されます。
なので、サイクルの図をしっかりと理解しておきましょう。
カルノーサイクルにおける効率についても出題されるので、定義から押さえておきましょう。
後述の「カルノー冷凍サイクル」とセットで覚えると理解しやすいでしょう。


2-7. 熱力学の諸関係式 ×

検定のレベルでは出ません(明らかにオーバーキルです…笑)


2-8. 実在気体のフガシティー ×

これも、検定のレベル外です。出ません。


2-9. 熱力学線図 ×
ほぼ出ませんが、全く出ないとも言い切れません。
等エントロピー膨張と当エンタルピー膨張がグラフでどう表されるかくらいは把握しておくと良いでしょう。


③気体の化学反応 ◎
ここも最頻出分野ですが、高校化学で大半をカバーしているため、あまり力をかけずとも解けるでしょう。
受験時の感覚を思い出すことができれば十分に通用します。

3-1. 化学量論 ○

要は反応前後における物質の収支を合わせられれば十分です。
細かい蘊蓄はさらっと流しましょう。


3-2. 熱化学 ◎

この分野は、問題をひたすら解いて感覚を身につけましょう。
標準生成エンタルピーに関してはよく問われるので、用語の定義をしっかり押さえておきましょう。
なお、発熱反応においては、ΔHは0より小さくなる一方、ΔQは0より大きくなります。
言葉の定義による違いですが、ここを曖昧にすると記号の間違いによる思わぬ失点を招くので、頭に入れておきましょう。


3-3. 化学平衡 ○

ここも、問題を解いて理解を深めましょう。
質量作用の法則、ルシャトリエの法則、ファントホッフの式の3つは定義から丸暗記しておきましょう。
平衡に及ぼす添加物の影響は、なぜかよく出題されるので押さえておきましょう。
数値解析、高圧の化学平衡は出ないのでノータッチでOKです。


3-4. 反応速度 △

あまり突っ込んだ出題はされません。
反応速度式とはどういう立式をするのか、一時反応式の解き方(微積分含めて)、アレニウスの式あたりを押さえておけば十分でしょう。

反応速度定数の理論や二次反応などは検定の範囲外だと感じました。
高圧反応は全く出ませんでした。難しいですし、スルー推奨です。


④燃焼・爆発◎
この分野は、用語の定義を書かせる傾向にあります。
計算問題は例題レベルの簡単なものなので、用語をしっかり押さえましょう。

燃焼、爆発は言葉の定義を押さえましょう。
特に「爆発の定義と爆ごうについて」は頻出です。

火災と火炎の種類に関しても、4つの分類(伝播火炎、噴流火炎、プール火炎、ファイアボール)を押さえておきましょう。

爆発の種類に関しては、なぜか出題範囲外でした。


4-1. 燃焼・爆発の反応○

ここはあまり出ませんでした。
総括化学反応式と素反応式については、記述できるようにしておくとよいでしょう。


4-2. 燃焼・爆発の発生○

熱発火理論と連鎖発火理論について、定義を30~60字程度で書けるようにしておきましょう。
グラフの概形を書けるようになればなお良しですが、数式の導出まで押さえる必要はありません。

爆ごうの発生では、先に述べた爆ごうの定義および爆ごう発生の原理は押さえましょう。
爆ごう理論の導出については、検定の範囲外でした。


4-3. 燃焼・爆発危険性の評価と予測 ◎

最頻出分野です。
どこが出るかというと、「爆発限界に関する法則」「希釈効果を予測する三角図」の2点です。

用語として押さえるべきは、発火温度、爆発限界、引火点、最小発火エネルギーと消炎距離、消炎直径です。

爆発限界に関する法則については、バージェス-ホイーラーの法則、爆発限界に関するルシャトリエの法則が最頻出です。
計算自体は例題レベルですので、ケアレスミスなきよう式を正確に暗記しましょう。

不活性ガスによる希釈効果を推定する三角図も、最頻出です。
三角図の読み方で引っかかることが多いので、テキストに記載の三角図を使って色々な読み方を試してみましょう。


4-4燃焼・爆発の影響 ◎

爆風の影響を予測するホプキンソンの三乗根は最頻出
です。
例題を繰り返し解いて、式の使い方を身に染み込ませましょう。


4-5. 爆発事故とその実例 ×
出ません。



⑤毒性ガス ×
この項目自体からの出題はありませんでした。
しかし、気体の毒性は必ず出題されるので、後の「ガス各論」で各気体の毒性を押さえる必要はあります。


⑥ガス各論 ◎

必ず出題されます。
学識と保安管理の2科目ともに出題されるので、力を入れて取り組みましょう。

学識では、主に一つないし二つの気体に着目し、その「化学的な性質、工業的な用途、工業的製法」について自由記述します。
保安管理では、数種類の気体の「安全に関わる性質」について選択問題が出ます。

詳しくは以下をご覧ください。
ガス各論について「出る」と検定で言われた所を記載しています

水素:性質・製法

一酸化炭素:性質

二酸化炭素:性質・用途・製法

希ガス:性質・用途

メタン:性質・用途・製法

LPG:性質・用途・製法

エチレン:性質

酸化エチレン:性質○
ブタジエン:性質

アセチレン:性質・用途・製法○

アンモニア:性質

一酸化窒素:性質・用途・製法

硫化水素:性質

塩素:性質

ホスゲン:性質・用途・製法○

臭化水素:性質

フッ素:性質・用途・製法

ゲルマン:性質


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今回は、検定の1科目目「学識」に絞った説明をしました。
次は、もう一つの科目である「保安管理」について触れたいと思います。