論文を読むことは研究者にとっての自己投資です。
せっかく読んだ論文だからこそ、未来の自分に確実な利益をもたらすようにしましょう。

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学生時代は、論文を読むだけだった
私は生粋のめんどくさがり屋です。
大学~大学院では、論文をまとめ直す事がありませんでした。
多読乱読のスタイルです。
 ・知識は勝手に蓄積されるもの
 ・意図的に積み上げるものではない
こんな信念を持っていました。

まさに「読んでは投げ、読んでは投げ」。
当時のデスクの両端には、読んだ論文の山が堆くそびえ立っていました。


当時の知識を、今思い出せるか?
当時勉強したことの90%は思い出すことができません。

勉強した大枠はかろうじて覚えています。
 ・植物の大まかな分類
 ・遺伝学の名前と役割
といった具合のものです。

しかし、その一歩先に踏み込んだ知識、例えば
 ・遺伝子のファミリーの分岐
 ・今の遺伝学で分かっていること
という話になってくると、もうお手上げです。
細かい話になればなるほど、記憶に濃いモヤがかかってしまっています。


読むだけスタイルの問題点
以下の3点だと感じています。

①論文を読んだことで満足してしまう
 ・論文を読み始めたばかりの学生や
 ・その分野に慣れていない研究者の方々
 ・英語が苦手な方
に多く見られます。
読むことで精一杯になり、肝心の知識が頭に入らないのです。

②なぜその論文を選んだのか分からなくなってしまう
多忙な研究者の方はこのパターンが多いでしょう。
 ・色々な研究分野を横断している
 ・入ってくる情報数が多すぎる
こうなると情報が混線してしまい、思考の道筋を思い出すことが難しくなります。


③知識は蓄積するけれど、研究テーマに進歩が見られない
先ほどの私の例も、このパターンに当てはまります。
量をこなすことに目がいってしまっている人に見られます。


論文でまず押さえておくべきところ
以下の2点です。
・検討で得られた大まかな傾向
・実験系で扱っている具体的な条件の数値

大まかな傾向は記憶に残りやすいものです。
一方論文を自分のテーマに応用するには、実験条件の数値が必要になります。
例えば高分子の重合では
 ・溶媒の種類
 ・反応温度
 ・開始剤の濃度
これらのうち一つでも違えば、反応は全くの別物になってしまいます。

「細かいポイント」を完璧に頭に叩き込むのは無理というもの。
しかし論文を「読んでは投げ」してしまっていると、うずたかい論文の山からいちいち引っ張り出さねばならない。
それはとても非効率です。


論文から得た知見を自分のモノにするステップ
論文の要点をメモすると良いです。
私は以下の4ステップの順にこなすと効果的でした。

ステップ①:論文を読みながら、余白にメモを取る
 ・ここは良いな
 ・ここは分からないな
と思った点は、どんどんメモしていきましょう。

 ・なぜ良いと思ったのか
 ・どこがどう分からないのか
と言った点も書くようにします。
見返した際に目立つよう、赤ペンで余白メモをすると良いでしょう。
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ステップ②:読み終わった時点で余白のメモを見返す
読んだ直後は「良いな」と思っても、最後まで通読した後では「やっぱり要らない情報だ」と感じることはままあります。
メモを見返しながら、インプットする情報を選定していきましょう。
 
ステップ③:新たなメモに落とし込む
白紙に余白メモの情報を写し取ります。
この段階で思考が整理されます。
私はwordを使って纏め直しを行っています。
 ・簡単な概要
 ・自分の研究に活かせると思った部分
 ・理解(記憶)が十分でない語彙
これらを中心に据えると勉強が捗ります。

ステップ④:メモを見返す
定期的に見返す習慣をつけることで論文の中身が血肉になってくれます。
学習は反復が基本です。
私はwordに打ち込んだメモをプリントアウトして、実験の合間などに軽く目を通すようにしています。


まとめにかかる時間は自己投資
私の場合、まとめには10~30分程度かかります。
やってみると、作業の合間は「時間を無駄にしている」と感じてしまいがちです。

しかし、白紙にメモを落とし込んでいく段階で、思考が整理されて理解が深まります。
自分の着目したポイントを意識し直すことができます。
これにより論文の知見が記憶の奥深くに刻み込まれるのです。

まとめの10分~30分は、まさに「投資」の時間です。
これが後々レバレッジとなって、自分に返ってきます。

アウトプットすることは、何よりのインプットになるのです。

【参考記事】

最後に、私の論文メモをリンクに示しておきます。

せっかく時間をかけて読んだ論文は、確実に自分の財産にしておきたいものです。
何でも欲張りにいきましょう。