先週の日曜日、「地頭力を鍛える」というフレーズに惹かれてフェルミ推定の本を買ってしまいました。
暇つぶしに解いてみたところ、存外におもしろかったです。
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暇つぶしに解いてみたところ、存外におもしろかったです。
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フェルミ推定とは
フェルミ推定(フェルミすいてい、英: Fermi estimate)とは、実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。オーダーエスティメーションや封筒裏の計算(英語版)ともいわれる(wikipediaより抜粋)
物理学者であり1938年のノーベル物理学賞を受賞したエンリコ・フェルミに由来します。フェルミはこの手の概算を得意としていたようです。原子爆弾の実験の際、手元にあったメモ用紙を爆風に晒し、その飛距離から爆発のエネルギーを概算したという逸話があるほどです(ホプキンソンの三乗根を利用したのですかね?)
代表的な問題は「日本にある電柱は合計で何本か?」「世界で1日当たり何枚のピザが食べられているか?」など。回答に当たっては制限が多く、短い時間内(3~5分)、検索は一切禁止、紙とペンのみなどなかなかにキツいです。
「地頭力を鍛える」というフレーズにホイホイ誘われ、物は試しとやってみました。非常に面白く、いい息抜きになりました。そして問題を解く中で、研究に通じる感覚があるなと感じました。
フェルミ推定中に感じたこと
①枝葉を見分ける嗅覚が身につく
フェルミ推定では規模の感覚を掴むことが求められます。すなわち「答えと同じ桁数」に近づくことが大切です。例えば日本にある電柱が合計5000万本であれば、「1000万=10^7」という「アタリ」をつけられるかどうか。10万本だったり10億本だったりすると、規模の感覚を掴めたとはいえません。オーダーが±1(100ならば、10~1000の位)までは許容範囲のようです。
答えと同じ桁数に近づくことは、研究で言う「確からしさ」に結びつきます。フェルミ推定を解いてみて、短い時間で確からしい答えを出さねばならないというプレッシャーが、些末を切り捨てる力になりました。何が「確からしさ」に最も効いてくるのか、無意識的によりわけることができました。
桁数でアタリをつけるというのは、現象を理解する上でも非常に大切です。例えばラジカル重合におけるモノマーラジカルの濃度は約10^-8のオーダーであり、1分後には定常状態(生成と消費が釣り合う状態)になるといわれています。なのでラジカル重合のフラスコ内では、非常に低濃度のラジカルが常時生成→消費を繰り返している、というイメージを持つことができます。オーダーを押さえることで、種々の反応の起こりやすさを類推できます。
また、テーマの枝葉を見つける点においても、同じ感覚を当てはめることができるなと感じました。
私が今抱えているテーマでは、モノマーのグラフト率の向上を検討しています。ここ数週間での発見は「副反応で溶媒が反応していそうだ」ということでした。その解決に躍起になっていました。現時点のデータで8割方説明はできるが、残り2割を詰めて完璧な説明にしようとしていました。
しかしこれは、本来の目的=グラフト率アップとはあまり結びつかない現象です。「これも枝葉の一つなんだ」と気づき、衝撃を受けました。
②答えのない問題を解く基本姿勢が身につく
研究開発では、行き詰った際に頼る答えがありません。似たような物質の情報は時たま拾えますが、情報に頼るとむしろ逆効果の場合があります。扱う物質がオリジナルであることや、合成の系や評価系などが違うことが理由です。
情報と実際に扱っているモノの相違点を認識しておかないと、見当違いの方向へ向かってしまいます。情報は傾向としてしか利用できませんし、言い換えれば傾向をつかむために欠かせません。むやみやたらに情報収集するのではなく、限られた情報と常識、今までに培ってきた感覚を総動員して仮説を立てる姿勢が求められます。
フェルミ推定では、自分の中の常識しか情報として使えません。自らの中の常識(例えば日本の面積)・今までの生活で培ってきた生活感(例えば電柱間の感覚)をフル活用して答えを練り上げなければいけません。なんとか足掛かりを得ようとするファイト精神が培われました。
③楽しい
社会人になると、ドリルを解くような場面はめったに遭遇しません。一方、フェルミ推定の本には考え方の一例が示されているため、自分の思考回路とどう違ったのか対比ができます。答え合わせできる楽しさがありました。
社会人として答えのない中をさまよい続けているので、いい息抜きになりました。
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今回使ったフェルミ推定の本は↓です。
著者の細谷功さんは、東大工学部出身で、東芝でエンジニアとして働いた後コンサルタントとなった理系畑の方です。製造業を中心とした製品開発の戦略策定を手がけていたこともあり、企業の研究開発と親和性の高い文章でした。手にとってみて良かった一冊でした。
また、こちらも購入してみました。
これはおいおい解いていこうと思います。Amazonで軽く中身を見たところ「アメリカ人は1日に何人空を飛んでいるか」「世界で1日に消費されるエタノールのエネルギーはどれくらいか」など、面白そうな問題が見られました。届くのが今から楽しみです。
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