一世代前の様々な科学者の、研究に対する考え方・研究の進め方について書かれている一冊。
これを読んで、衝撃を受けたので、書評を書きました。

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一読して、「科学とは研究者の人間味の結晶」だと感じました。


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優れた科学者の、考え方の道筋
サイエンスをする=何もかもを数式や法則に則って論理的に考えなければならない と私たちは思いがちです。
だが本書によると、優れた科学者は、むしろ「○○は△△なのではないか?」という直感=洞察を先にするようです。
頭の中には、なんとなくカタチが見えていて、それを理論で詰めていく、というように。


偉人も努力の人だった

本書によると、この洞察力は、決して天賦の才などではなく、気の遠くなるような観察や思考の積み重ねの上に見えてくるものらしいです。

数例を挙げると、

・朝永振一郎は、蔵書の欄外に沢山の書き込みが見られるほどの猛勉強家であった
・ノーム・チョムスキーの深い知識と洞察は、「常人には真似のできない読書量」によっていた
・ラモン・イ・カハールは、膨大な量の脳組織のスケッチをすることで、肉眼では見えないはずの「電気信号の方向」を見出してスケッチしていた

このような例が、本書にはいくつも紹介されていました。
まさに研究とは積み重ねの賜物だと感じました。


イチオシなエピソード
朝永振一郎が、天才肌の湯川秀樹に対して「敵わない」と漏らしながらも、猛勉強という独自のスタイルにより、湯川に匹敵する成果を出した、というもの。

偉人の人間臭さに親しみを覚えるとともに、たとえ要領が悪くとも自分らしい努力をひたむきに重ねていきたくなりました。


何が洞察を生むのか?

この本によると、洞察を生むのは、「なぜこうなるんだろう?」と思う心のようです。
そして、洞察を理論化するための試行錯誤を続ける原動力となるのは、「もっと知りたい」というハングリー精神。

これら2つは、情報があふれる今の社会では育みにくいと、私は思います。
その一方で、大量の情報に素早くアクセスできることの利点は決して無視できないものです。

ゆえに、今の社会における科学者は、

・一つのことをとことん突き詰めて考えて洞察を生む
・たくさんの情報に害されず、素早く捌いてうま味を取り出す

この2つの力を育むこと、その後に掛け合わせることが求められるのかな、と思いました。


総論

科学に関わる全ての人を勇気づける一冊だと感じました。
是非皆様にも、手にとって読んでもらいたいです。