- 研究開発職を10年継続。気づいたことは「この職種は成長の実感すらも自分から動かないと手に入れられない」ということ
僕は新卒で入社して以来10年間、研究開発職として働き続けている。
途中で休職やら何やかんやトラブルはあったが、基本ずっと同じ働き方であり、「研究開発職として働くとはどういうことか」という知見も増えてきた。
その一つが「この職種は、自分から動き出さないと何も手に入らない」ということだ。
研究開発とは新しいことをカタチにして他部署に手渡すことである。
なので全ての職種・工程のスタート地点であり、スタートを切るための初動を生むだけの力をインプットしなければならない。
年次が上がってくると「何を研究するか」「何を開発するか」といった、「そもそも何やる?」の根本を見つけ出していく必要がある。
僕が個人的に思うのは、「これは他においても当てはまりやすい」ということだ。
特に顕著なのは、仕事が終わった後の評価・フィードバックにおいてだと強く感じる。
研究開発(特に研究)では、どこで案件が終わったのか、具体的な成果は何だったのか、想像以上に把握しづらい。
1つの成果を生むのに5年10年レベルの時間がかかること、製品化まで行かずにお蔵入りするテーマが9割以上なこと、こういった要因がある。
また「自分で考え自分で見つける」の独立独歩の気質は部署全体の雰囲気として定着しており、評価を与えようとする意識は他部署・他職種と比べて低い。
なので、自分への評価すらも、自分から上司にお伺いを立ててゲットしにいく必要がある。
(なお僕は、お願いしてなお断られることすら頻繁にある)
- 〇自分から動き続けるのは確かにキツイ。でもそうして得た数少ない成長実感は極上の味
自分で案件を見つけ、こなし、その評価・フィードバックもお願いする。
この自立駆動システムは、続けるうちにキツさがボディーブローのように効いてくる。
一時期は僕も疲れ切ってしまった。
(過去記事:【体験談】やることがないと人は腐って病む【愚痴】)
でも、そうして得た数粒の成長の味は、格別で極上だった。
具体的に僕が感じた成長どころは「知見と経験と洞察がこんなところで結びついてくれるのか!こんなところに活きてくれるのか!」ということだった。
例えば、僕はこの10年で、
・高分子、樹脂、接着剤
・食品、酵母、サプリメント
・バイオマス、甘味料
といった分野を経験してきた。
その過程で、例えば高分子だとひも状分子の動き方をベクトルで表現する手法を学ぶ、酵母サプリだと有効成分の粒径とレセプターの授受しやすさの関係を実験を通じて体得し、バイオマスでは分解のしやすさのスケール感を文献と実地の双方から学べた。
こうして、それぞれをとにかく必死でこなす中で、「ある程度の高分子量の物体の動き方」のイメージが、数式・知識といい感じに溶け合って僕の頭の中でオート稼働するようになってくれた。
この能力は、どういう実験をしたらどのくらい成功しやすいのか?を精度高く予測できたり、他社特許に記載のデータを読み取り「この系はうちでも応用できそう」と判断したり、そういったところで役立ってくれている。
また意外なことに、拡販用の技術資料を作る際にも、「想定されるケースでの推奨使用法」を用意するのに「この使い方はどんな経路でどのくらい効きそうなのか」という概算がスッと出てくるようになった。
こうした知見・経験・洞察の結びつきで案件を解決できた時は、喉が渇ききったときに飲む一杯の水、くらいの格別な美味しさがある。
- この辛い過程は人間力の開発そのもの。折れずに長い目で見て淡々と続けよう。
僕はこの過程、自分で何かを獲りにいく力、は「人間力の開発」そのものではないか、と感じている。
頭の中だけでいくら考えても、それはカタチにはならず、実際に動いて検証する必要がある。
しかもそれは生きている限り(そしてほんの少しでも上を目指そうとする限り)、常に必要とされる力だ。
AIが台頭してきている今、これまで以上に「人間力」が問われているのを肌で感じる。
その一方で、年を取るにつれて「自分で何かを獲りに行く」ことは加速度的に難しくなってくると実感している。
率直に言って、30歳を超えるとケツが重くなるのだ。
(僕は今35歳だけど、入社当時より明らかに初動が遅くなった。体感で1/3くらいしか着手できていない。次の動き出しまでのチャージ時間は2倍くらいに増えてしまっている)
だから、若いうちにこの「自分から動かないと何も手に入らない、評価すらもらえない」という独特の苦しみを味わい、それに慣れていくことは、将来生き残るうえでこの上ない投資になっている、と僕は言いたい。
今、成長の実感が得られない・仕事がしんどい...と感じている若手の研究開発職の方々には、ここで折れてほしくはない。
未来への自己投資と信じて、辛いときは休みつつ、コツコツ・淡々と継続できる自分なりのやり方を見つけ出していってほしい。
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