今の僕は病んでいる。
その原因を考えているうちに、「ストレスをため込みすぎてしまって精神がショートしてしまった」という事に気が付いた。
むろんこれだけが病んだ理由ではないのだけど、それなりに寄与率は大きそうだ。

何がストレスになったのか。
掘り下げていくと、上司のマネジメントスタイルがその一端にあることが分かってきた。

...僕の今の上司は、典型的なマイクロマネジメントだ。
具体的には、僕が仕事をしているか、しょっちゅう確認に来る。
実験室を1時間おきに覗きに来るのは毎度のことで、無断で席を外していたら「何してたの?」と聞かれる。
デスクで仕事をしていても、後ろから覗きに来ることも1日に1回は必ずある。
僕だけでなく、計6人いる課員全ての動きを把握しようと、ちょこまかと動き回っている。

正直に言うと、こういう事をされると僕はプレッシャーを強く感じて仕事に集中できない。
「顔見せしないと」という重圧が心の大半を占めてしまい、実験や調査といった実務に集中できないのだ。
この前も、実験に時間をかけてしまい「早くデスクに戻らなきゃ」というプレッシャーから焦ってしまい、フラスコを割ってしまった。
そしてデスクに居ても、「覗かれる」というある種の恐怖感が芽生えてしまい、研究開発のキモである計画を練ることに集中できない。
ここ数ヶ月の間、僕は独創的な仕事をした(できた)という実感はない。

このマイクロマネジメントが、僕がしたいと思ったことの芽を潰していった。
これが僕のストレスの原因の1つだった。

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僕の上司は「仕事で自己実現をしたい」という。
そしてプレイヤー気質であり、なんでも自分でやらないと気が済まない(と自認していらっしゃる)。
なので仕事が振ってこず、やる事が少ない...ということは前回話した(この記事)。
厄介なのは、この「何でも自分でやらないと気が済まない」という点を、「直したい」と言いながらも内心誇りに思っている部分があることだ。
上司と話していると、節々から↑を感じ、「ああ、この人は直す気がないんだなぁ」と思ってしまった。
多分この先も直らないだろう。

...こういった上司は、PDCAサイクルのCAをするので、「CA型上司」と言うそうだ。
この前受けたwebセミナーで、某自動車会社の変革内容を紹介されたが、そこで「CA上司」として紹介された事例が、まさに僕の上司の仕事スタイルに当てはまっていた。
要は、計画段階では何もせず(仕事を適切に割り振るなどせず)、チェック段階で(仕事が実行段階で)上司自身が手を出したり口を出したりする。
これでは部下は育たない。後出しの叱責に脅え、思わぬミスをしてしまうのだそう。
また、計画段階でリソースを適切に配分しないので、目先の仕事に追われてしまう=重要だが緊急ではない仕事(イノベーションに結び付くシーズの育み)に手が回らない...と紹介されていた。

マイクロマネジメントも一種のCA型上司と言える、と僕は考える。
両者の共通点としては「自分1人の快感を優先して動く」ということ。
チェック段階で上司が手を出すのは「俺がいないとやっぱりダメだろう」と思える快感ゆえであり、部下の行動を逐一把握したいのも上司1人の快感ゆえだと。
そしてCA型上司の下では叱責のプレッシャーに晒されてパフォーマンスが低下するのと同様に、マイクロマネジメントでも上司の圧を身近に感じてパフォーマンスが低下する。
仕事が独創的であればあるほど、"普通の仕事"のスタイルからは離れるため、上司の目につきやすくなり、余計に叱責される。
そのため部下は独創的な仕事を放棄するようになる。

マイクロマネジメント、CA型上司は、R&Dの芽を潰す...と僕は言いたい。

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これに対して、理想的な上司は「PD型上司」と言うそうだ。
先ほどのCA型とは違い、計画~実行までの段階で適切な計画を組み、実行~終了までは部下に任せる...という基本姿勢だ。

思えば、1つ前の課の上司がそうだった。
新規案件のコンセプトを時間をかけて練り込み、それを受け取り計画を練った。
その一方で、いざ実験となると、その詳細はこっちに任せてくれた。
当時は「口出さないんだな~」くらいにしか思っていなかったが、今思い返すと、仕事してますよアピールをする必要は一切なく、プレッシャーが皆無で思う存分実験ができた。
そのおかげで自然と手数が増え、思ってもみなかった傾向が見えて、研究開発ががぜん面白くなった。
(その部署の別の上司とは決定的に折り合いが悪く、結局その課は離れてしまったのだけど)
もちろん良い事ばかりじゃなかったけれど、研究に没頭できるという点では恵まれていたんだなぁと感じる。

独創的な仕事を育むのは、間違いなくPD型上司だ...と僕は考える。
「だから今の上司の下でこうしよう」という提案があるわけではなく、ここまで読んでくださった方々には申し訳ない限りなのだけど、せめて受講したセミナーの報告書にさりげなく改善を促す文書をすき込む...くらいはしたいと思う。

そして何より、僕が誰かの上司になった際は、できる限り計画段階に力を注ぎ、部下の手に渡った時点で手は出さないようにしようと思う。

R&Dの現場の実情の1つとして、この記事が誰かの参考になれば幸いである。