つい先日、僕は久しぶりに自分の手を動かして実験をした。
重い検討が一区切りした時で、特許を書いたり報告書を書いたり...と文書作業の日々だったので、実験をするのは少々新鮮な感じだった。

...その一方で、この夏は猛暑が特に激しく、仕事のプレッシャーもあって僕は体重が3kg減ってしまった。
ちなみにBMIは18.4。なんと低体重のカテゴリに入ってしまった。
身体に種々の異変が出ていて、耳鳴りが酷いし階段を上がるのも一苦労になったしで、体力の低下をひしひしと感じていた。

そんなこんなで実験当日。
実験内容は、粉末サンプルのFT-IRを測定するというもの。
作業自体は簡単で、
・FT-IR測定機器に、粉末サンプル用のアタッチメントを組み立ててセッティングする
・サンプルを調製する
・FI-IRの起動を行い、数種目のメンテナンスルーチンを行う。
・サンプルを測定する
・後片付けをする

たったこれだけ。実働時間は1時間ほどだった。

...ただ、たったこれだけの内容で、僕は低血糖になってしまった。

その日は昼ご飯が少なかったとか、疲れがピークで貧血気味だったとか、いろいろと言い訳はできる。
ただその時に痛感したのは、「もうこれまでみたいに、ひたすら実験数を稼ぐのは難しいなぁ」という一種の諦めだった。

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僕は今年で34歳になるが、今年の春夏から、明らかにこれまでよりも体が動かなくなった。
まず、僕は趣味で陸上競技をしているが、無理が効かなくなった。
これまではどんなに走り込んで筋トレをやって追い込んでも、遅くとも2日以内には回復できていたのだけど、この頃から回復が間に合わなくなり(回復したと感じていてもいざ動くと体が動かなかったり)、ケガこそしないが心身ともに大きく削られた。

そして日常生活も色々と支障を感じるようになった。
まず、朝の起き立てが辛い。休んでもストレッチをしても何をしても辛い。
これまでも朝は弱い傾向にあったが、少なくとも目覚めて2~3分後にはベッドから抜け出せた。
それが今ではベッドの上で5分、ベッドから起き上がって座り込んでもう5分時間をおかないと、着替えることすらできないようになってしまった。

日常生活においても、これまで捌けていた作業量がこなせなくなった。
本能的に「シンドイ」と感じる作業ペースが、これまでよりも1~2段階遅くなった。
例えば皿洗いでは、これまでは最速ペースで手足を動かして洗えていたのだけど、今はそのペースよりも1段落とし、手足の軌道が目で追えるペースでないと疲れを感じるようになってしまった。
こうしたちょっとした積み重ねが効き、作業量はこれまでの5割~8割まで下がってしまった。

そしてついに仕事にも、衰えの魔の手が伸びてきた...というわけだ。
これまで僕は、「とにかく量を積んで、データで殴れ」という根性派だった。
入社時から計8年いた前の部署では、↑の方針で難局を切り抜けてきて、新事業を立ち上げることもできた。
しかしこれからは、その考えを改めなくてはいけない。

周りの人に話を聞いても、概ね30代中盤から「ガタッと体力が落ちる」局面が訪れるという。
早い人では30代に入った頃から↑を感じるのかもしれない。

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...ずっと気になっていたことがあった。
今の部署の課長は自分でも実験をする人なのだけど、実験を1やるとすると、その1から必ず1の結果を見出そうとするのだ。
データを何とか有効活用する姿勢がすごく強くて、これまでは「あさましいなぁ」と思ってしまう節があった。

今なら納得ができる。
課長がそうしたのは「自分の体力が実験を重ねるに耐えられない」からであって、もっと言うと「ケツが重くて実験に手を出しづらいから」だと。
だから些細な実験でも、出てきたデータをとにかく有効活用することで、また動く手間を省いているのだと。

...この経験から得た気づきは、「実験量はとにかく実作業量を少なくする+得られたデータから可能な限り多くの事を言えるようにする」のが研究開発のコツだ、ということだ。

↑を実現するには、大きく分けて以下の2項目に力を注げばいい。
 ① 事前の計画を丁寧に練る
 ② 実験を丁寧に行う

①に関しては、所内のベテラン研究員の方々に相談すると、思いもよらぬ抜け道を発案してくれることが多い。
今回の僕の案件に関しても、相談した方が代替手法を提案してくれて(大雑把に言うと、粉を固めて測るのではなく、粉のまま測る方法を教えてくれた)、実験時間が丸1日→1時間まで節約できた。
こうしたメリットを考えても、常々申し上げているように、所内の方々とは仲良くしておいた方がよい。

体は動かなくなるという前提でいると、いざ動かなくなった時にも仕事の質を担保できる...と僕は痛感している。