企業の研究職たるもの、製造現場のフォローは不可欠で外せない"大事"な仕事だ。
僕も例に漏れず、ここ最近は現場の依頼案件を処理する毎日を送っている。
具体的には、とある田舎工場での製造工程に使われている精製樹脂の代替品を探してくれ...という案件だ。
探す...とは少し語弊があって、正確には「製造側が選んだ数種類の代替品をテストして、これまでの品質を担保できるモノがあるか確かめてくれ」という内容だ。
実験を行うために必要な情報は、まずは製造スキームだ。
僕は現地で製造を担当するスタッフさんに、スキームが記載されている手順書を送ってもらうようメールでお願いした。
(工場の現場では『作業手順書』という説明書のようなものがある。どんな人でもその通りに作業をすれば、確実に目的通りのモノが作れるようになるのが狙いで、災害防止対策でもある)。
そしてメールの返信を受け取ったのだが、そこで僕は愕然と
添付された手順書が「手書きのスキームをPDF化したもの」だった。
しかも問いただしてみると、現場ではずっと(10年20年レベルで)その手書き文書を「正式な手順書」として扱っているようで、
wordなどで電子ファイル化したものは無い...とのことだった。
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驚いたのはこれだけではなかった。
手書きPDFの内容も難解で、まさに解読...となる文字起こしを続けていると、ある工程にかける時間の内容がページごとで違うことに気づいた。
そこでさっきの製造スタッフさんに話を聞いてみると、「現場の熟練者さんが勘所頼みで時間を変えている」とのこと。
せめて目安となる数値だけでも聞いたところ、なんと今の条件は、手書きPDFに記載の値と2倍違っていた。
またも愕然としながら、1つ1つ条件を聞き出し、試行錯誤を繰り返しながら今に至る...。
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...と愚痴をこぼしてしまったが、↑の話は弊社だけではなさそうなのが現実だ。
SNSなどで話を拾うと、多かれ少なかれ、手書きの工程書レベルのローテクは多くの工場で存在しているようだ。
「知っている人が皆辞めて、実際の手順はもはや闇の中。製法を一から見直してる」という嘆きも散見された。
また面白いのが、弊社はいわゆる「DX化」の推進を声高々に叫んでいる、という点だ。
「工場にDXを導入して効率化を図る!」と社員に通達するのはよいが、踏むべき順番というものがあるのでは?と感じる。
そして風の噂では、弊社はDXエンジニア枠の新卒の採用数を増やしているとかいないとか...。
想像してほしい。
DXエンジニアの卵が放り込まれるのは、手書きPDFがまかり通っている田舎工場。
そこで何年も揉まれてようやくDX化に関わることができるも、その頃には初心枯れ果ててどうでもよくなっている...。
僕はそんな事態を危惧している。
(実際に僕がそうだった。会社勤めの激流に呑まれ、僅か半年で初心は跡形もなくなってしまった)
DX化に携わりたいと考えている方々には、就職先を今一度よく考え直してほしいと切に願う。
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