僕の異動先は、前いた部署よりも新規用途を見つけ出す必要がある所だ。
現業の製品の売れ行きが良くなく、加えて原材料や燃料費の高騰もあり、現在は赤字部門。
↑の状況は数年単位では変わりそうもない見込みで、だからこそ一発逆転を狙って新規用途に踏み出さなければいけない。
そんなこんなで副業時代から新規用途探索をやらせてもらい、今も主メンバーとして携わっている。

...先日、↑の新規用途探索の一環として、とある調査会社と接触した。
行き詰っている現業の棚卸として、現業で使用している物質の使用用途に関する特許の調査を行ってくれるとのこと。
「特許なんて調べつくしたよ...」と内心ガッカリしたが、相手は「次の手が無いと分かるのも立派な調査の結果」と意に介さず。
「ま、それもそうか」とひとまず思い直し、この調査会社の結果を待つこととした。

そして1ヶ月後、送付された調査結果を見て、僕は仰天した。
調査結果はExcelファイルに纏められており、
・国内外全ての特許が網羅。件数は全3,000件。
・その全てに当社の製品の展開可能性が付記。
・分類分け等その他の情報も整理済(プルダウン機能付き)。
まとめの質の高さに唸らされるとともに、今まで自分がやってきた"調査"は子供だましだったと痛感させられた。

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今回の経験で分かったことは、調査業務は「何も引っかからなかった」と所感を抱いて終わり、では全くダメだということだ。
業務である以上、具体的な形でアウトプットをする必要がある。
より具体的に言うと「これだけ調べた。だけど何も引っかからなかった。」と、調査量と調査の中身を定量できるようにしなければならない。

定量することで、初めて第三者も評価することができる。
そして「これだけ調べて何も出てこなかったら、もう調べつくしたのだろう(じゃあ他の手段を考えるか)」「これだけしか調べてないのだったら、もっとこの調査を継続するべきだ」...というように、次の手を考えやすくなる。
また、「この特許は気になるな...ここに絞って調べてみれば?」というように、新たな視点での深掘りも可能となる。

調査結果を基に判断するのは、調査員以外の人物であることが多い。大抵は上司だ。
判断する人がきちんと判断できるだけの材料を揃える。そこまでやって初めて調査完了となる。
考えれば当たり前の話だが、「今日1日調査しました。何も見つかりませんでした!」とだけ報告しても、その調査がどれだけの意味を持つのか、上司には判断できない。
「これだけ調べても引っかからなかったんですよ!だからもうこの調査は潮時ですよ!」と所感だけ伝えても、同じく上司は判断に困る。
「過去30年間の系1,000件の文献を調査して該当するものがなかった。だからこの調査は引き上げ時ではないでしょうか?」と言われて、ようやく上司は「じゃあ引き上げるか」と結論を出せる。

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僕はこれまで、調査結果をごく簡単にしかまとめていなかった。
調査で参照した特許や文献のデータはフォルダへ保存し、所感をまとめたメモも同じフォルダに格納した。
でもそれだけでは、上司に「全部のフォルダを見て今後を判断しろ」と、手間をぶん投げていたにすぎなかった。

調査業務は調査内容をパッケージ化して上司に見せるまでが仕事だと、今回の経験で感じ入った。
結果が伴わなかった調査内容も「無駄」と切り捨てるのではなく、1つ1つ全てをリスト化して保存すべきだ。
かかる時間は大きく増えてしまうが、それが本来の形である以上、眼をそらしてはいけないと思う。