僕は1か月前に今の部署に異動した。
その異動先で初めて任された案件は、5年間継続されているものだった。
「これだけ続いているのだから、関わっている人はみなベテランなんだろう」と思い、検討の方針について特に疑問を持つこともなかった。
他社の製品がどんな代物でどのような情報が出回っているのかについても、あえて自分から知りに行こうとはしなかった。
しかし先日、どうにも次の手が思いつかず、僕は「○○(開発品の一般名)、△△(用途)」というワードでインターネット検索した。
僕の中でこれは恥ずべき行為だった。
インターネットのブラウザなんてものは初級レベルの代物であって、企業が情報収集用に使うには幼稚すぎる...と思う節があったからだ。
また、「皆さんは5年もやっているから、今さら他社の製品情報を教えることもないだろう」と思い込んでいた。
...しかし検索の結果、想像以上に参考になるデータが見つかった。
そしてそれを「既にご存知かと思いますが~」という保身の枕詞を添えてメールで共有したところ、まさかの「誰も眼にしたことがない」だった。
5年間続いている案件、競合他社のHPを調べたことのある人はゼロだったのだ。
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こうした現象が起こってしまったのはなぜか。
理由の1つが「R&Dは異動が多く、担当者が基礎情報を把握していないことが多い」だと個人的に思っている。
僕の周りの方々は、概ね長くても5年スパンで異動を繰り返している。
そのため専門外のテーマを扱うことが多く、先任者がやったことの流れを丸々コピーするのが精いっぱいになってしまう。
「先任者と同じ酵素を使ったらAの結果が出た。だから次は酵素を変えてみる」といったように、経験則の積み重ねonlyになる。
そしてもう1つ。異動するまでキャリアを重ねた研究員はやる事が多くて忙しい。
僕の周りでは、入社して2年3年目の時点でテーマを任され、他部署への報告資料の作成も回ってくる。
これに加えて企業の研究開発においては、「安全」という大きな負担がのしかかる。
毎月のヒヤリハット報告、安全推進会議への出席、KYトレーニング、云々云々...。
こういった雑務に押しつぶされた結果、基礎的な情報収集に割く時間も気力もなくなってしまう。
更には、これまでの経験から「先人のやり方のコピペでもある程度形になる」ということが分かっているため、あえてその枠組みを崩しに行く人は本当に少ない。
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なので、自分にとって新しい案件を手掛ける際は、まずネットでキーワード検索をしてみることをお勧めする。
僕は今回の出来事で、「たかがネットと侮らない事」ということを学んだ。
その案件の音頭を取っている人でも、案外ネットで検索しつくした...という方は少ない。
むしろ年次が上であるほど、忙しさと経験に負けて、足元の情報を拾えていない可能性は大いにある。
ネット情報も企業が出しているものは概ね信頼性が高い。
そうした情報を集めると、案件へどの程度注力すべきか...などが素人目にも見えてくる。
一度騙されたと思って、ネットを活用してみるのもありだと考えている。
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