僕は1月1日付で異動となった。

異動先は同じ研究所の違う研究室。所内異動というやつで、勤務地は変わらず元のままだ。
研究内容は大きく変わり、これまでは樹脂関係だったが、今は生物関係を手広くやることとなった。
期待されている役割も、どうやら変わったようで、今の上司は僕に「皆のパイプ役」「上司自身の側近」の2つを担ってほしいと思っている節がある。
要は社長秘書だ。

...そんなこんなで今までとは激変した研究所生活を送ることになったが、僕は今、社会人になってから一番楽しく仕事をしている。
最初は不安で、異動1日目に出勤する時は「前の部署に戻れたらなぁ」「異動がなかったらよかったのになぁ」とくよくよ考えもした。
しかし異動1日目の終わりには「ここでやるぞ!」と前向きになっていた。
そしてその前向きな気持ちは、異動して1ヶ月弱が経った現在でも衰えることなく続いている。

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なぜこんなにも仕事にやる気が出るようになったのか。
原因は多々ある(周りの方々が話しかけてくれるようになった、仕事が降ってくるようになった、合わない人と離れられた...)と感じている。
しかし主要因の1つは「研究対象が興味の湧くものになったこと」だと感じている。

僕は大学時代は植物の研究をしていた。
もっと遡ると、高校時代は生物選択だったし、中学校では理科が一番の得意科目だった。
小学校時代は毎週のように川に魚取りに行っていたし、幼少期はバッタを捕まえては家で飼っていた。
要は生物、もっと言うと自然が好きだったのだ。

今の会社に入った理由も、植物の研究がしたかったからだ。
しかしいざ入社してみると、配属先はなんと高分子事業。
これまで全く経験のなかった無機物と向き合い続けることとなった。

僕は無機物に対して興味を抱くことができなかった。

もちろん、最初は異動願いを出した。
しかし、社会の荒波に揉まれるなかで、植物・生物への想いは無事に仕事をこなそうとする保身に負け、異動願いも出さなくなってしまった。
また、研究活動自体は面白いものだったので、モノへの興味関心が無くともやっていけるだろう、と思い込むようにしていた。

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しかし今振り返って思うのは「興味が無い時点で前向きになるのは至難の業だ」ということだ。
現時点で興味関心が無いものに没頭することは、少なくとも僕にはできなかった。
↑でいう「至難の業」のレベルは、陸上短距離でいう桐生・山縣レベル(ともに100m9秒台)ならできるという意味であって、
凡人が努力して到達できるレベルではない(特段恵まれた素質が必要)ということだ。
興味が仕事に占める割合は、想像以上に大きかったのだ。

今は仕事の勉強が全く苦ではなく、こじつけめいた理由から無理に取り組もうとせずとも、勝手に文献に手が伸びる。
何なら休日も、喫茶店で文献を片手に過ごしたいくらいだ。
「もっと知りたい」というエネルギーが迸っているのを毎日実感している。

...研究開発職においては、仕事の質に「興味関心」が占める割合はとりわけ大きいと考える。
そして大事なのは、興味関心が必要かどうかは個人差が大きいのではないかということ。
先輩や同僚が「仕事だから興味が無くとも割り切れるよ」と言っていても、それは自分には当てはまらないかもしれない。

今、研究や開発の内容に息苦しさを感じている方がいるならば、ぜひとも勇気を出して異動の願いを出してほしい。
自分自身のルーツに沿った興味関心を、忙しさの中に埋もれている興味関心を、掘り出して大事にしてほしい。