数ヶ月前に、僕の職場に中途入社の社員が入ってきた。
仕事ができない僕自身を棚に上げて物を申すと、端的に言ってひどい。
ひどさを醸し出す原因は種々あるのだが(書き始めると愚痴のオンパレードになるのでここでは書かない)、一番の原因は「自分の思い通りにやろうとすること」だ。
中途入社とはいえ当方の機器には初心者。年下の同僚が機器の使い方を手取り足取り教えたのだが、なぜか違うやり方で動かそうとする。
朝ミーティングの司会も、同じように年下の同僚が一言一句教え込んだのだけど、それすら言う順番を入れ替えたりする。
他にも細かいところを挙げれば、消灯をしない、ミーティング中にため息を頻発する、挨拶をしない、などなど...。
しかもたちが悪いことに、ミスから学ぼうとせず、同じ過ちを繰り返す。
↑で書いた朝ミーティングの司会は、3回こなして+同僚が『うまくやらなかったら次はない』とプレッシャーをかけてようやく新入社員並みの出来になったほどだ。
-------
この社員を見て、僕は「周囲が手取り足取り教えてくれるのは、新入社員に対してだけなんだ」と強く感じた。
ある程度年齢を重ねると、たとえ明らかに間違ったことをしていても、周囲はなかなか声をかけない。
「年長者だから~」という気後れ、「もう言ってもどうしようもない」という諦め、「声をかけるだけの気力が沸かない」というやる気の問題...
こういった理由から、年長者のミスはなかなか改善されない。
唯一の例外は新入社員だ。
新入社員に対して皆が声掛けをする理由の1つは「一から育ててやろう」という庇護心が(辛うじて)働く年代だからと僕は感じている。
まだ素直で、まだ伸びしろがある。無意識のうちにそう感じ取っているからこそ、声掛けするだけのモチベーションが湧く。
僕の観察結果だと、20代は↑の庇護心がギリギリ働く領域で、30代に突入すると一気にキツくなる。
-------
一方で、中途入社の社員は、入社直後は「異分子」でしかないと感じている。
年齢は一種の脅威になり得る。
誰もが無意識に自分の地位を感じ取っている。その地位が脅かされるのではないか。そうした恐怖心が無意識下で働き、場を硬直させる。
しかも中途入社の場合、様々なバックグラウンド(何を研究していたか、大学はどこ出か...などなど)が隠れているため、未知への恐怖と気後れを更に助長する。
僕自身、「中途で採用されるからには頭がいいし経験も重ねているんだろう...あれこれ口を出すのはやめておいたほうがいいな」と何度も感じた。
研究開発の場合は、専門を深く掘り下げる学習体系から、とりわけバックグラウンドが脅威になる傾向がある。
...そのように自分が異分子である状況下で有効なのが「周りと同じように動く(動こうとする)」だ。
少なくとも敵ではないことをアピールせねばならない。
仕事は集団でするものである以上、業務をこなす前に場の構築をまずやるべきだ。
前述した中途入社の同僚は、「周りの動きを見取って学ぶ」ということが致命的にできていない。
だから今でも職場に馴染めておらず、上司からも不安の目で見られている...と僕は捉えている。
...そして↑のことは、近々異動する僕にも当てはまる。
僕は満33歳。周りの方々の庇護心が働かなくなる年代だ。
異動先とは現時点でも交流があるが、そのような環境で築いた「お客さん」としての信頼基盤はもはや使えないと考えた方が良い。
異動して少なくとも最初の3ヶ月は「とにかく周りの動きを見取って学べ」の一心で、動いても周囲を刺激せずスムースに事が運ぶ環境づくりをメインにしていきたい。
-------
あとがき。
僕自身、入社してしばらくはこの中途入社の社員と同じような働き方をしていた。
自分の思い通りのやり方で物を運ぼうとし、周囲のやり方に身を染めようとしなかった。忠告もガン無視していた。
そんな僕でもこの研究所にい続けることができたのは、ひとえに年齢の力だと思う。
もし僕が33歳という今の年齢で当時と同じことをしていたら、まず間違いなく厄介者として異動させられていた(あるいは辞めさせられていた)だろう。
年齢は大きな武器にもなるし脅威にもなる。
中途入社に限らず、どこかへ異動する方は、↑を念頭に置いてもらえたら幸いである。
コメント