ここ最近、僕は新規案件に手間取っている。
やっていることは製品の無溶剤化。
製品を有機溶剤下で作ることはできたが、実際に拡販するには(有害な)有機溶剤が無い方がいいとのことで、機械を使って無溶剤下で作る検討を始めた。

...この機械が中々の曲者で、要は高温で材料を混ぜ合わせる類のものなのだけど、
温度パターンや混練時の微調整など、勘所が無限にあって、苦手意識を払しょくできずにいる。

今回の検討でも、その苦手意識が足を引っ張っている。
とりあえず、脈々と受け継がれている「基本パターン」で作ってみたのだけど、見事に失敗。
その「基本パターン」から何かを変えて再トライすべきなのだけど、何をどう変えたら良くなるのかがピンとこない。
試作段階で課題はハッキリしたものの、その課題を生んだ現象の原因が何で、何をいじくれば解消されるのかが分からなかった。
おまけにずっと立ちっぱなしで肉体的にもキツく、頭がもうろうとしてきたのだった。

そんな時に助けてくれたのが、今回コンビを組んだ同僚だった。
この機械は結構大きくて(全長10mはある)、2人作業が義務付けられている。
今回相方になってくれた同僚は、この機械を扱って7年というベテランだった。
7年間で磨かれた観察眼は確かなもので、出来上がった製品の失敗度合いを見て、
・「粘度が少し低いから、入口の処理温度を少し上げよう」
・「色が少し濃い。投入して10分後に1分だけ練り方を強くしたら上手くいくはず」
・「少し固いので、出口側の混ぜを弱めてみよう」
などなど、その機械の性質面から、いくつも改善案を出してくれた。
そしてそれに従った結果、何とか製品化の目途が立つまでには処方を確立することができた。


...実は上記の同僚は僕の同期で、特別に仲がいい同僚の1人だ。
(向こうは高卒採用なので、年齢は離れているが)。
なので、上記のやり取りも非常にスムースに進んで、「彼でよかった」と心から感謝した。

多分だけど、コンビ相手が彼ほど仲良くなかったら、今回のような劇的な改善はなかっただろう。
こういうやり取りは、思っていることをポンポン口に出せるスムースさが重要だと強く感じたからだ。
あまり仲良くない相手だったら、お互いに遠慮してしまい、意見は出ず...という事態に陥っていたと思う。

また、相手が出してくれたアイデアをきちんと受け止められるかどうかもキモだ。
何故か分からないが、僕は時に相手のアイデアを拒絶してしまう状態に陥ることがある。
くだらないプライドだったり、その日の機嫌や疲れ具合だったりが、素直さを奪ってしまうのだ。
そういう時、僕は独りよがりになってしまっている。

研究は(時に)一人でも進捗はできるが、独りだと絶対に進捗できない。
今回の経験を通じて、僕は↑のように考えるに至った。


...では、独りよがりにならないために気を付けることとは何か。
1つ挙げるとするならば、普段のやり取りを誠実にすることだと感じている。

誠実とは、相手のことを少しでもいいので思いやり、自分の責任も自覚したうえで、その場にふさわしい対応をしようという心意気のことだ。
・少しくらいしんどくても、頼ってくれた人を後回しにしない、
・目の前に仕事が積まれていても、話しかけてくれた人を邪険にしない。
・定時に帰れなくとも、上司のお願い事は聞き流さない。
などなど...。

思うに、誠実さを目指すなら、「○○する」というよりは「△△しない」という考え方で動く方が、確実に習慣となってくれる。
世間一般で言われているポジティブさの発現方法とは逆だが、ある種日本人的性質である誠実さには↑の考え方の方が合っているのかもしれない。

モノととことん向かい合う研究開発は、そのモノとの闘いでもある。
全力で迎え撃つためには、1人より2人の方が絶対にいい。
やはり最後にものを言うのは人との絆だ。僕はそう思っている。