ついこの前、実験で使う酢酸ブチル(有機溶剤の一種)を小分けするため、研究所の裏にある溶剤庫へ足を運んだ。
酢酸ブチルは以前よく使っていた関係で、一斗缶サイズ×2を購入しており、まだまだ余りがあるはずだった。
よしんば1缶目が使い切られていたとしても、予備でもう1缶買ってあるから、そちらを開封すればよい。

しかし溶剤庫で酢酸ブチルの一斗缶を持つと...非常に軽く、ひょいと持ち上がった。
この瞬間「またか...」と心の中で舌打ちした。
備品を使い切って補充しない。当研究所で幾度となく遭遇したパターンだ。

...「いやいや、まだ予備の1缶がある。今回は何とかなる。その間に発注をかけよう」と思いなおす。
そして予備の1缶を手に取った瞬間、舌打ちは憎悪に変化した。
予備の1缶も、勝手に封が切られており、中身は無かったのだ。

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上記のような「消耗品を使い切っても補充しない」というマナー違反は、枚挙にいとまがない。
しかもこのマナー違反で苦しめられているのは、いつも特定の方々だ。
消耗品を使い切ったら補充する、という当たり前を徹底する、マナーの良い方々。
(僕自身、手前味噌だがこの点だけはマナーが良い方だと自認する。少なくとも目の前で切れた備品を発注せず放置したことはない)。
そのような方々は、決まって中堅どころのご年代の方々だ。

今回僕は、あまりにも腹が立ったので、そうしたご年代の方々と愚痴を言い合った。
以下はその時の抜粋である。心して読まれたい。

〇Aさん(30代、現職経験20年)
・使いたい時に備品が無いと、正直言って〇したくなる。
・普段の挙動から、使い切った犯人はたいてい目星が付く。
・口に出さないのは面倒くさいから。その場に居合わせば張っ倒す。

〇Bさん(40代、現職経験15年)
・自分が他人の使い切った備品を発注する時、「なんで私が...」と恨みさえ抱く。
・発注も大変で、システムへの入力は面倒くさいし、発注申請書や納品書の提出とファイリングも地味に労力を食う。発注したモノを保管場所に収納するのは肉体的にもハード。
・使い切って放置する人は、給料泥棒と思ってる。

〇Cさん(40代、現職経験20年)
・みんな言葉にしないだけで、誰が放置するか/誰が補充するかは分かってる。
・やっぱり応援したくなるのは「補充する人」で、仲良くしたいなぁ、と思う。
・放置する人はその反対で、なるべく実験室には入ってほしくないなぁ。

〇私自身
・なんで僕が他人の尻拭いをせなあかんねん〇すぞ
・お前ちゃんと補充しろや○すぞ
・発注品重いねん運ぶのキツすぎて吐きそうなるねん〇すぞ

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...今回の愚痴の言い合いで分かったのは、概ね以下の通りだ。

・使い切った備品の放置に強いイラつきを感じている方は一定数いる。
・放置する犯人は、概ねの目星をつけられている。
・放置者なのか補充者なのかによって、周囲からの風当たりが変わる。

僕は今回の愚痴の言い合い(という意見交換)を通して「すごく怖い」と感じた。
僕自身、消耗品の補充以外の面ではマナーが良くない面もあり、無意識のうちに他人に強いストレスを与えてしまっている可能性が高い。
じゃあどうすればいいのか?と考えたが、まずは当たり前の事を逸脱せずこなすようにし、その上でマナー違反の情報を目にしたら、それも気を付ける...という当たり前の事しかできないんだと思い至った。

今回この記事を読まれた方々は「消耗品を使い切った時点で補充しないのはマナー違反」という情報を得たと思う。
なので今後は、意識して補充するように心がけてほしい。
あらぬ評判から自らの身を守ることにも繋がるからだ。

どんなビジネスマナーよりも仕事術よりも、ラボでも研究所でも、配属されたらまず「備品は補充する」を身に着けてほしい。
僕は強く願っている。