僕がこの研究所に勤めて丸8年。
数多くの研究開発案件をこなしてきたが、その大半が1つのパターンに集約されている。
それは「既存のモノを組み合わせて新規な能力を付与する」というパターンだ。
入社するまでは「企業での活動といえど研究なので、全く新しい技術を0から創造するのが大半なんだろうなぁ」と考えていたので、既にあるモノを組み合わせていくやり方に、大きな違和感を感じたものだった。
しかし実際に仕事を進めてみると、ある意味でこのやり方しかできないことに気が付いた。
第一に、全く新しい技術を創造するには、時間がかかりすぎる。
企業活動はどの分野も〆切との闘いである。
研究開発といえど、企業としての具体的な目標(2030年までに売上○○%アップ!というような中期・長期目標)を達成できるように計画を立てなければならない。
即ち5~10年のスパンでモノになる見込みがある(少なくとも何らかの形にはなりそう、という保証がある)新製品を構想せねばならない。
何もないところから何かを生み出そうとすると、5~10年のスパンには到底入りきらない。
納期に間に合うようにするには、今形になっているモノを組み合わせるのが、一番早いのだ。
他にも、全く新しい技術を追いかけるには、人員も費用もかさむ。
要はコストが大きすぎる。
同期が勤めている他の研究所でも、似たり寄ったりの状況と聞いた。
おそらく多くの企業の研究所(企業体力がずば抜けた一部の大企業は除く)は、僕と似た状況にあるのだと推測する。
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そんな状況の中で役に立ったのが「今すぐ使える技術/原料をネットで探し当てる能力」だった。
僕の実家は比較的インターネットの導入が早く、僕が小学生の時(1997年?)にはPCでネットにアクセスすることができた。
当時の僕はコアな知識を深堀りしたくて仕方がない子供で、インターネットを使って色んな事(ドラゴンボールの戦闘力考察だったり、FF9の黒魔導士の設計図だったり...)を調べていた。
インターネットで何かを調べようとする癖は以後も続き、陸上部時代には効果的なメニュー案を拾ってくるのにすごく役立った。
この癖が、会社に入っても僕を救ってくれた。
なにか案をひらめいたら、まずはネットでキーワードを打ち込み調べてみる。
見つからなかったら、キーワードと検索エンジンを変えて、また調べてみる。
調査の初期、何か取っ掛かりを見つけないとどうにもならない時期は、1日中↑を繰り返していた日もあった。
たかがインターネット、されどインターネットで、ネットで見つけた情報を基に深堀りしていくと、使える情報(論文の実験データだったり菌体データだったり)が手に入ることが多かった。
ネットで見つけた情報の何が一番良かったのか。
僕が感じた一番の効果は「検索に使うキーワードの適切さが向上するから」だった。
調査にはキーワードが不可欠だが、漠然としたアイデアには具体的なキーワードが付属しないことが多い。
だから最初のうちはキーワードも曖昧模糊としたものしか思いつかず、キーワードが見当違いの可能性すらある。
そんな中、目的のモノに近い情報を発見すると、情報の中の活字からキーワードを拾い上げることができる。
これを繰り返して、目的のモノを釣り上げる釣り針を鋭く磨き上げていくと、調査は加速度的に捗る。
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僕が抱いている疑問は「普通の方々は、思った以上にネットで検索しないのではないか?」ということだ。
上司が僕以外の同僚にアイデアを振っても、殆どの方がその場でネットに何かキーワードを打ち込むことはない。
おそらく「ネットの情報は信用ならない」と思っているのだと推測するが、その後本腰を入れて調査した姿を僕は見たことがない。
調査は初動の速さが肝心なのであって、ネットでいかに素早く最初の1歩を踏み出せるかがコツの1つなのかもしれない。
情報は使いようによって、良い方向にも悪い方向にも化ける。
読者の方々が調査を担当される際は、とにかく早くネットで調べてみる→似通った事例からキーワードを磨いていくという流れをお勧めしたい。
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