僕は今現在で入社8年目になるが、入社以来ずっと今の研究所にいる。ジョブローテーション制度が今なお盛んな当社からすれば、かなり異端だ。
そして入社丸8年ともなれば、この研究所でも中堅扱いとなっており、責任ある仕事を任されるようになってきた。

ここで言う「責任」とは、ふつうはチーム内での指揮だったり、部下への指導だったり...そうしたマネジメント的性質のものだ。

しかし僕の場合、そうではない。
「もう中堅どころで主査なんだから、1人で新規案件をしっかり形にしてね」という類の責任で、いうなれば「己のパフォーマンスが周囲に与える利益への責任」。
アイデアのシーズをしっかり吟味し、適切な実験手法と設計でサンプルを調製し、物性を抜け漏れなく評価し...というモノへの側面から、育ったシーズを営業部にきちんと売り込み、ユーザーへの紹介まで持っていく、といったプッシュ力、そしてシーズが更に育った際の権利範囲まで不足なく押さえられるだけの綿密さを持った特許の作成など...。
思った以上に多岐にわたる能力が求められるようになった。
そしてこれらの内容をスピーディーに、かつ複数進行で行わなければならない。
管理職に上がるのが前提な総合職(大卒)採用として、上記の方向へ歩んでいるのは、かなり異端だ。

一方、僕と同じ職場にいる同期は、僕と違って、まさに従来の正道を歩いている。
管理職を見据えたマネジメント業務に全振りして(されて)いて、もはや係長クラスの仕事をしている。
自分で実験をすることはほぼなく、5~6人のチーム内から上がってきた実験内容を文書/数字の形で理解して、次にどうするか支持を出している。
しかし彼のようなマネジメント全振りも、上司からすると「かなり異端」とのことだ。

普通は、僕たちのような中堅どころは「マネジメント半分、自分で実験半分」といったところらしい。
しかし各々の性質とR&Dの現状を踏まえた結果、このような異端2人となったみたいだ。


...僕は、↑に「同期と自分が異端だ」と書いたが、実はこの研究所の他の若手も、各々独自のルートを歩んでいる(ように見える)。
隣の課は慢性的な人不足で、僕より1年下の後輩が、僕より遥かに多くのマネジメント業務をこなしているし、はたまたその隣の課にいる1つ下の後輩は、課が人不足ではあるものの、黙々と仕事をする性格を活かして、実験のエキスパートとなっている。

よくよく見ると、各々の資質がうまいこと反映されたキャリアパスになっている。
一方で、営業部や品質管理部など、他の部署の同僚と話をする機会もあるが、彼らはだいたい似たルートを歩んでいる(と僕には感じられる)。
この研究所のような適材適所さはあまり見られず、苦手な業務内容にずっと充てられて苦痛だ...という感じを受けることが多い。


...少なくともこの研究所は「様々な個性がハマりあえる場」だと感じている。
それは、ひとえにここ独特の雰囲気のおかげだが、一方で研究開発という業務が持つ特殊さでもある...と考えている。
仕事である以上、正しい方向へ導くマネジメント役は絶対に必要で、その必要度は思った以上に大きい。
そしてマネジメント役の下で働く兵隊も、必要なのは言われたことを正確にこなす人材だけでなく(そうした人材も確かに必要だが)、新しい物事を自分から探し求めて形にしていく自走能力を持った人材が必ず要る。
そして上記の2つのバランスをどこに置くかで、その人のキャリアパスが決まる。
どの職種でも同じ事が言えると思うが、研究開発は特にその傾向が強く、比較的己に合った働き方が実現しやすい部署だと感じている。


長々となってしまったが、言いたいことは「研究開発に来てよかった」ということだ。
就活時代は、人と交流するのが苦手な自分が管理側に回るなど考えられず、企業の研究開発を受けずアカデミックに残る...と考えた時期もあったが、結局は新規案件の探索と実現という、自分の好奇心と没頭力が存分に生かせるポストに就かせてもらっている。

就職を間近に控えた方々にも、「民間だから...」と気後れせず、ぜひとも企業の研究開発職を目指してほしい。と思っている。