僕は「新規用途探索兼務」なる仰々しい肩書を与えられていて、従来の製品開発に加えて、まったく新規のフィールドへの用途展開も検討している。
いわゆる「ド新規案件」というやつだ。

ド新規案件をどう進めるのか。
僕なりの進め方は、以下の2つだ。

進め方①:実験室に一人で籠って黙々と作業する。
進め方②:違う課のメンバーと組んで実験する。

一人で黙々と実験するのは性に合っているし、違う課のメンバーとワイワイやるのも、いつもと違う刺激を受けることができて面白い。
しかし僕は、上記のやり方でド新規案件をさばいていくうちに、ある問題点に出会ってしまった。

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問題点とは「同じ課の人間からの誤解を招きやすい」ということだ。
僕のド新規案件は、あくまで「兼務」であり、今いる課で従来の製品開発も受け持っている。
今の課がホームグラウンドなのだ。

一方、僕の周囲には、僕のような立場で動いている人間はいない。
皆、課内のチームに所属し、各チームの課題に沿って業務を遂行し、その結果を報告・共有している。

しかし僕は(比較的)フリーな立場だ。
課長から「○○ができるかな?」的なアイデアレベルのざっくりとした指示を受け、それを実証していくのがメインとなる。

ド新規アイデアの実証は「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」の世界であって、シンプルな系での手数がモノを言う世界である。
本人が「モノになる」感覚を得られれば良いので、理路整然どころかグチャグチャな経過と結果であり、忙しい上司・同僚の時間を割いて報告できるような内容ではない。
なので周囲との情報共有がほとんどできない。
また、僕の場合は上司が秘密主義(こんなところまでしか出来てないのに報告するのは...?的な)なこともあり、課内にも他部署にも報告できていない。
加えて、一人で実験室に籠っていたり、違う課と共同実験をしていると、同じ課の人間の目には触れにくい。


...こうした状況で起こりうる事態は「あいつは何をやってるんだ?」という疑念である。
疑念は日々のストレスと簡単に化学反応する。
「オレは実機施策で忙しいのに、あいつは実験室でまったりか?」「こっちはずっと書類さばいてるのに、あいつはサボりか?」等々...。
「あいつはオレたちの見えないところで頑張っているんだ」というポジティブな意見には転換しにくい。

僕がもっとうまく立ち回ればいい(もっと情報を流す、あえて目に付くようにこまめに居室に戻る等...)のだが、僕は社交性が最低レベルなので、そこまで上手く行動できない。
(そしてそんな所にリソースを割くなら、その分を開発に費やしたい)。
少なくとも僕自身は、上記の疑いの目が自分に向けられている...と思っているし、幾分かは真実だと思う。


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僕が強く感じているのは「ド新規開発はある意味『閑職』ではないか?」ということだ。

ド新規に専念しようとすると、どうしても現場で手を動かすことがメインとなる。
新しいアイデアがモノになりそうかどうかは、己の感覚と経験を通した勘所でしか掴めないからだ。
つまり、昇進に必須のマネジメント業務はなかなかに割り振られにくい。

↑の状況は、実際に僕が経験中のものである。
僕の職場には同期が1人いるが、彼は課に3つあるチームの1つにおいて、ほぼ全てのマネジメント業務を一任している。
周囲の評判も極めて高く、「彼は1~2年は早く昇進するだろう」との共通見解を得ている。
一方僕は、新規用途探索の兼務となってからは、そういった「マネジメントのしがらみ」からはほぼフリーで動かせてもらっており、完全に一研究員・一ソルジャーである。
昇進評価の多くを占めるマネジメント能力の開発は皆無で、我ながら昇進できるか不安で仕方がない。
(あまり昇進したくない、という本音もあるが、いざ自分が同期に抜かれる場面を想像すると『昇進したいなぁ』とも思う。向上心と世間体への執心は簡単には割り切れない)。

...ド新規案件を扱っていきたいという研究者の方々には、↑のようなマイナス面があり得るということも念頭に置いてもらいたい、と思う。
しかし僕自身感じるのは「自分のやりたいように動けるのはすごく幸せだ」ということだ。
昇進したいという見栄がある一方で、「これ以上昇進できなくとも、周囲の評判が良くなくとも、いいモノの創出にダイレクトに向かい続けたいなぁ」と思っている。
閑職バンザイ、である。