ここ最近の出来事。
僕がやっているテーマの1つが、大口ユーザーの目に留まった。
ユーザーからは至急のサンプル調製を依頼され、試作品の物性値を揃える作り込みや、パラメーターを振ったサンプルの作製など、追加の実験に追われることになった。
このテーマの重要度が課内で格上げされ、別テーマの人員から数名がヘルプとして組み込まれ...と、もはや僕1人のテーマではなくなってしまった。


この状況は、企業の一サラリーマンとしては喜ぶべき状況だろう。
お客さんの目に留まり、社の売上アップに繋がるかもしれないチャンスが巡ってきた。僕個人の業績アップにも結び付くかもしれない。
しかし僕は、正直なところ、今の状況を喜べずにいる。

理由ははっきりしている
テーマが注目を浴びるようになってから、自由にテーマに取り掛かれなくなったからだ。
サンプル調製の度に、増えたメンバー全員で顔を合わせて意見をすり合わせる。
できたサンプルの評価実験においても、細かいやり方まで逐一話し合う。
直感的に「これが良さそう」と思った方法があっても、やる前に否定されて手を動かせないことも多々ある。

以前は僕1人の直感に任せたところが大きかった。
勿論失敗も多々あったし、独りよがりな結果の出し方になってしまった感は否めなかったが、スピーディーに手を動かせたし、試行錯誤を繰り返す中で見えてくる「試作品の枠組み」というものは確かにあった。

1人で動ける最大のメリットは、思い浮かんだアイデアを即座に実践できる機動性だと、今回の出来事を通じて実感した。
真に実用解に迫るアイデアというのは、実際にモノをこね回す中でしか掴めず、しかも他人に触れられると即座に消えてしまう類のものだ。
だから、少なくともシーズ作りの段階では、他人を介在させるべきではない...と僕は思う。
(そういう意味では、先述した僕のテーマは『0→1』から『1→10』の過渡期にあたる段階かもしれないので、僕の感じている不満は少々的外れなのかもしれない。)

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僕は「シーズを創り出すのに不可欠なのは『個々人の直感に任せた試行錯誤』」だと強く感じている。
少なくとも「0→1」の段階では、テーマは担当する1人に任せておくべきかな、と思う。
しかしながら、企業のR&Dでは思った以上に難しいのが現実であって、介在してきた他人を「0→1」に巻き込むしたたかさが必要...なのかもしれない。