部内異動となって新しい課に着任して早2か月。
新しい課の上司は研究のディスカッションがしやすい雰囲気で、以前より小まめに報連相するようになった。
こちらの実験結果を面白そうに聞いてくれて、「次は○○したらいいんじゃない?」と軽いタッチで提案してくださる。
自然と話が弾み、思ってもみなかったアイデアが口から出ることが多くなった。
以前はそうではなかった。
前の課の上司は、端的に言って怖いと感じることが多かった。
メールの作成に集中している時、機嫌が悪い時などに話しかけると、すごくつっけんどんな返答をされた。
僕が怖がりな性格なのもあって、最後の方は殆ど報連相できなかった。
話しかけるだけでも勇気を振り絞らねばならなくなり、何回か過呼吸になりかけた。
そんな雰囲気の中で仕事をしていたら、アイデアが枯れるのも当然だった。
義務的な報連相≒「報連相を完遂すること」に意識が全振りされてしまい、その先の「新たなアイデアの獲得」には結び付き得なかった。
創意工夫が楽しい研究開発のはずが、言われたことをこなす→内容を報告するだけの単なる作業に成り下がってしまっていた。
今の課に移って切に感じるのは、「プラスのモチベーションと弾む会話があって初めてインスピレーションが湧く」ということだ。
研究開発におけるディスカッションの雰囲気は、多少行き過ぎなほど明るい方が良い。
「それ意味あるの?」とツッコミを入れられると察知してしまうと(例え相手方が意図していなかったとしても)、その時点でアイデアの芽は引っ込んでしまう。
また、経験を重ねるうちに「無謀な明るさ」と「実現可能な明るさ」の違いが分かってきて、無意識レベルで実現可能性を汲んだ「いいアイデア」に収斂する
僕は、話しやすい(話しかけやすい)雰囲気を作るのは、研究開発における重要な能力であり、一種の義務ですらあると感じている。
以前は僕も自分の殻の中に籠っていた。必要な事以外は話をしようともしなかった。
しかしそうして得られるものは単なる「作業の成果物」でしかなく、その恩恵は驚くほど小さかった。
何が小さいかというと、成果が直線的な積み上げでしか増えていかず、複利を感じなかったのだ。
アイデアを出したりインスピレーションを得ることは、それとは逆に複利的に成果が増えていくと感じる。
己の内にアイデアの貯蓄が貯まり、年次を重ねるごとに発想と思考に深みが増す
僕も最近ようやく、この「複利」の良さに気付いたところだ
職級が上がるにつれて、「話しやすい雰囲気を作る」ことはますます大切になる。
僕自身も肝に銘じるし、この文書を読んでくださった方々も、一度でいいので振り返ってくださると本望である。
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