僕は300m系のメニューが苦手だ。
200mは加速区間で上げたスピードを維持するだけで到達できるが、300mはアクセルを再度吹かさねばならず、体力をべらぼうに使うからだ。

でも速くなるためにはやらねばならぬ時がある。鍛錬とはそういうものだ。
そんな時、僕はなるべく練習の始めに300mを走るようにしている。
ジョグと体操で身体をほぐし、ドリルと流しで心身のエンジンが掛かったら、その次には300mを走る。

300mは「ある程度の出力(80~90%)で走り切る」事さえできれば何らかの効果が見込めるメニューだと感じている。
生理的要素を狙ったトレーニングは概ねそんなもので、フォームがぐちゃぐちゃでもまずは走り切ることが第一。
僕はそう考えている。


僕がスプリント練習から学んだ教訓の1つは「全身全霊をかけた1~2回の『本練習』以外、トレーニングの効果はほぼ同じ範囲に収まる」という事だ。
例えば、ウォーミングアップでよくやる「腿上げ」。
競技経験のある方なら分かると思うが、腿上げを3setやっても100setやっても、得られる効果は大して変わらない。
「ウォーミングアップだから追い込みきれない」という心理的な蓋が作用してしまっていて、効果を増幅できるだけの負荷まで達しないのが主な理由だ。

このように、どんな練習・トレーニングにもピークがあり、ピーク時=全集中した本メニューだけが「大した効果」を得ることができる。
それ以外は全て枝葉なのだ。

枝葉のメニューからは、ピーク時に比べると低い効果しか得られない。
枝葉ならば、最初にやっても最後にやっても、得られる効果はドングリの背比べレベルだ。

ここで僕個人の意見を出す。
それは「どうせやる(しかも低い効果しか得られない)のであれば、最初にやって気持ちを晴らそう」というものだ。

走り込まないといけないと頭では分かっているが、どうにも気が進まない。
ネチネチと腹筋を追い込まないといけないと思っているけど、やりたくない。

こうした「分かっているけどやりたくない」事は、できるだけ早く(なんなら一番初め)に手を付けると、思いのほかサクサク終えることができる。
そして、嫌なことが終わった後のメインメニューは、想像以上に美味しく感じる。

そしてこの教訓は、ランニング(スプリント練習)以外にも当てはめることができると考えている。


ちなみに、分野によって異なるのはピークの持続時間だ。
これは体感でしかないが、知的活動におけるピークの持続時間は比較的長く、数時間レベルで保つこともある。

一方で、肉体を使う活動におけるピークは、想像以上に短い。
僕は週5程度で短距離走の練習をしているが、ピークはもって10分程度と体感している。
60mを10本走るとすれば、ピークはせいぜい2~3本。
なのでそういう場合、最初の7本はピークに入るまでの準備を整えるために使う。
といっても手を抜くのではなく、フォームや力の入れ方を確認しつつ、強度を徐々に上げていく。

これは海外の筋トレ界でもよく使われている手法のようで、よく言う「10回3set」は実は強度が階段状に上がっており、最初からMaxでぶっ飛ばすわけではないようだ。
勉強でも、ピーク時間は限りがあると認識できれば、より戦略的に学習ブロックを配置しなおすことが可能である。
 
思いつくまま書いた。
誰かの参考になれば幸いである。