入社7年目の僕が日々の業務で使っている力の割合は、だいたい「コミュニケーション/作業遂行/アイデア練り=60/30/10」になっている。

入社1~2年目は、ほぼ100%が作業遂行力だった。
それが3~4年目になると、直属の後輩ができたりして、コミュニケーションの割合が若干増えて20/80くらいになった。
5~6年目では、コミュニケーション/作業遂行=30/70くらいになり。

今年になって直属の上司(アイデアマン)が抜けてしまい、自ら研究テーマを練り出す必要が出てきて、少しだけアイデア練りの力が求められるようになってきた。
自分より上の役職(主任研究員、主席研究員)を見ると、コミュニケーション力は今と同じくらいで、アイデア練りにかける時間が大きく増えている。
なので、今から2~3年後には「コミュニケーション/作業遂行/アイデア練り≒60/10/30」くらいになっているだろう。
(管理職の皆さんが作業遂行にかかる時間を残業で出しているのはここだけの話だ)

アイデアを練る事に関しては、これまでもやっていたつもりだったが、危機感の無い状況下でやりたい事をのほほんと考えていただけだったので、アイデアを練る力ではなかった(これについては後述)。
 

ここ数年で一番発達したのは「相手の考えを聞き、自分の考えを乗っける力」だ。
これまでの文からも分かる通り、だんだんとコミュニケーション力を使う割合が増えてきた。
コミュニケーションというとざっくりとしすぎているが、僕の場合は「目の前の相手が何を考えているのか聞き見抜く→自分の考えをそっと上乗せする」力だ。
円滑に人間関係を回す力とも、波風立てずに穏便にやりすごす力、ともいえる。
かつての自分が「研究には関係ない」と毛嫌いしていた類の力だ

こうした力を使うべき理由は過去に何度か書いた。
要は「研究活動も1つの社会的活動であり、人とのやり取りが何より重要な要素である」という事である。
今回はそれについては省略する。

今回書きたいのは「コミュ力を使って仕事ができると、なぜかとっても気持ち良くなる」といった精神的側面だ。
誰かと話すと、今いる集団の一員だと思えるようになる。
「この人の役に立ちたい」「自分が何とかしてここを支えていかねば」と思える機会が増えてくる。
そうした思いを持ってリサーチを進めると、独りでガツガツ調べていた時とは別種の洞察力が発揮される。
その結果、いいアイデアが生まれる。
そうしたアイデアをチーム内外のみんなと話すのはとても楽しいし、少しでも役に立てたという充足感が心地よい。


危機感の無い状況でのアイデア出しは「アイデアを練る能力」ではない。
これは僕が長年ハマった落とし穴でもある。
何かを支える事に関して責任がない状態で出したアイデアは、根本的な要素が抜けている。
それは利益だったり安全性だったりいろいろな形を取るけれど、「何かを支える」という観点が抜け落ちているため。
僕の場合、自分勝手に振る舞っていた(今も自己中かもしれないが)新入社員時にリサーチした内容は、全て「アイデア練りを語ったおままごと」だった。
 
思うに、本当のアイデア力とは、危機を乗り越えて誰かに何かを届けるために跳躍する能力ではないだろうか。
もちろん跳躍力を鍛えるために鍛錬を積むべきだけど、それ自体をアイデア力と思い込むのは未熟だと、過去の傲慢な自分に言い聞かせてやりたい。