僕は社会人7年目に突入するが、業界新聞の情報がただの断片にしか見えなくて絶望した。


つい最近、僕の直属の上司が異動した。
その上司の方は「いかに売り込むか」がモットーの人で、斬新かつニーズを見据えた研究テーマを僕らに配分してくれていた。
そして今、「研究テーマ職人」が居なくなり、僕がテーマを創る必要が出てきた(と僕は思っている)。

しかし、研究テーマの案などポンと出てくるわけがない。
危機感を感じた僕は、研究テーマを創り出すためのインプットを始めた。
具体的には、図書室に籠って業界新聞(日刊工業新聞)を読む、というもの。
業界の新規ニーズが具体的に分かれば、そこを狙った製品のアイデアが出るのでは?という期待から始めた。

いざ新聞を手に取ってみると、全くうまくいかなかった。
新聞記事の間に「ストーリー性」が全く感じられず、知識が力になる実感が皆無だった。
1つ1つの記事が断片的でしかなく、以前の出来事との間のつながりが全く感じられなかった。


これが一般的な世界情勢であれば、ストーリーがすぐにわかる。
例えばミャンマーのクーデターの件では、「軍が選挙に大敗」→「民主主義を疎む」→「クーデター」→「紛争へ突入か?」といった大枠が瞬時に頭に思い浮かぶ。
そうなるのは「ミャンマー」という国の特異性をある程度知っていて、かつ毎日ニュースを見ているからだ。
つまり、①ある程度の知識の基盤があって、②そのうえで高頻度で情報に接しているため、つながりが分かるようになっているのだ。


業界新聞では、この2つがともに乏しい。

まず「化学工業」という業界の知識がない。
業界の勉強というのは、英語や専門分野に比べてやり方が曖昧で、上司から推奨されることも少ない。
なので手を付けにくく、知識が積み重なりにくい。

そして、工業分野において、新たな情報が生まれる速度はとても緩やかだ。
製品開発から販売までのタイムスケールがとてつもなく長い(年スケール)ので、前のニュースから次のニュースまでの間が長くなり、つながりを意識することが極めて難しい。

この2点より、化学工業は業界の勉強が難しい分野だと言える。


ではどうすればいいのか。
正確には「どうすればよかったのか」になってしまうが、早め早めに業界の勉強に手を付けるに尽きる。
それこそ、入社1年目から業界新聞を手に取るレベルが好ましい。

独力で新規テーマを生み出す必要が出てくるのは、平均して入社5年目あたりだと、色んな人を見聞きして感じる。
ここでいう「独力」は本当の「独りぼっち」で、自分一人で営業にアポを取って顧客に売り込んだり、物性試験を立案して部下にやってもらったり...上司は自分の庇護者ではなくただの駒でしかない状況で、自分がテーマの責任を一から十まで持つということだ。

僕は経験して初めて分かったが、独りで責任を持つとは、想像以上に色んなものが要る。
知識はその最たるものだが、残酷なことに、知識は数年単位で積み重ねてようやく使い物になるレベルだ。


僕はヒーヒー言いながら、業界新聞を読んでいる
この涙ぐましい努力がいつ結実するのか。

この記事を読んでいる若手の方々には、早めに業界新聞を読む訓練(勉強)をしておいた方が良い、と伝えておく。