研究開発を何より促進するのは、上司の研究熱なのかもしれないと思いつつある。

僕の職場では、新年度を期に部門長が異動になった。
その方は仕事が何より好きで、時間があれば業界雑誌や特許に目を通している人だった。
突飛も無いアイデアを思いついては、「これどうだ?」と僕たちに投げてくる。そんなアイデアマンだった。

その方がいなくなった後、僕のいる居室のトップは、かつてNo.2だった係長になった。
その課長は実利主義的な性格が強く、引き継いだテーマを切り捨てる相談を部下と進めていた。
テーマに対するネガティブな考えを表に出すその姿勢で、部屋の士気がどんどん下がるのを感じた。


今思うと、異動になった部門長は、テーマや案件についてネガティブな感想を一切口にしなかった。
むしろ「この製品が採用になったら、楽しいだろうなぁ」というポジティブな声掛けしかしなかった。

当時は(はいはい、仕事がお好きなんですねぇ)と疎ましく思うことも多かったが、今思い返すと、その一言でモチベーションが焚きつけられていた。
「大事なものは失ってはじめて気づく」とは某長編漫画の台詞だが、その意味を今噛みしめている。


新規開発においてキツイのは、結果が出ずとも手を動かし続ける事だ。
モノになるかどうかすら分からない中で検討を続けるのは、想像以上に気力をすり減らす。

そんな中で2年3年と前に進み続けるには、何かしらの"励み"が不可欠だ。
その"励み"になり得るのは、管理職の一声なのではないか、と僕は感じたのだ。


間違っても、部下がデスクワークをしている中、仲のいい同僚と釣りの話をしてはいけない。
分析の女性の方の尻を追いかけてはいけない。
「こんなテーマ、僕はやりたくない」と駄々をこねてはいけない。

改めて、適切な振る舞いの枠は地位によって違うという当たり前の事に気付いた。
それは研究開発においても同じだと思う。