結局、一番仕事がうまく回ったのは、自分の興味が湧くように研究方法をデザインした時だった。

僕は、研究結果を研報に纏める事が何より好きだ。
また、実機で大きいモノをドカンと作るよりも、小スケールでのスクリーニングの方が心躍る。
そして、新しいモノを創るよりも、創ったモノを分析する時の方が楽しい。

これらから、僕の「好き」は以下の要素が大きいと考えた。
・大量の結果から傾向を掴むことが好き
・図や数字でバチッと分かるのが好き
・結果を文章に纏めるのが好き

上記の発見をどうにかして活かせないか...?
そう思った僕は、少しばかり遊んでみた。
具体的には、上記の「3つの好き」をなるべく多くできるように、働き方をちょっと変えてみたのだ。

まず、新しい薬品を手に入れ、スクリーニング的な実験を増やした。
また、試作品の分析を、少し突っ込んだ領域(上司からの指示が無いところ)までやってみた。
そして、得られた結果を定量化し、傾向が分かるように図にまとめ、ミーティング資料にでかでかと貼り付けた。


働き方をカスタマイズしてみると、いくつかの発見があった。

まず感じたのは、モチベーションの高まりだ。
今までは、出社しても「つまらんなぁ」と心がくさくさした。
しかし、自分の好きな実験や文書化ができる状況になると、出社時の足取りが軽くなり、「今日もやってやろうか」と前向きに思える頻度が増えた。

そして、フットワークも軽くなった
今までは、共同作業者の方とディスカッションする事はあまりなかったが、やりたい実験をやってみると、結果を確からしくしたい思いが強くなり、自然と「このやり方でいいか?」「次はどうしよう?」とディスカッションをするようになってきた。
自分でもいい変化だと思う。


今までは漠然と、「やるべき事を見つけて、やるべき形でやらねば」と思い込んでいた。
それが足枷となって、フットワークを必要以上に重くしていたのだと思う。

振り返って思うのは「人は幸せな時に一番アイデアが出る」という事だ。
面白ければ幸せな気持ちになる。幸せな気持ちになると、更に突っ込んだいいアイデアが出る(かもしれない)。

この連鎖を壊すのは、疲労だったり義務感だったりする。
連鎖を止めないように...と焦ってはいけないと感じる。

連鎖はすぐ止まる。僕の体感では1~2週間もすれば基底状態に戻る。
無理に抗おうとすると、リバウンドでますますやる気は落ち込む。


大事なのは、基底状態からアイデアの連鎖を起こしやすいように、働き方を整えていく方だ。
そのための効果的な手法の1つとして「自分の興味が赴くように、研究方法をカスタマイズしていく事」があると学んだ。
一番大事なのは、こういう方法があると気づき、そちらに舵を切ることを自分に赦す勇気ではないか、とも思っている。