この1ヶ月ほど、死ぬほど暇だった。
例によって、いくつかある大口テーマの全てが採用段階に至り、顧客の評価待ちになったからだ。
やる事がなく手の動かしようがない時は、暇が心身を腐らせていくのが分かる。
...が、数日前から始めた「ある事」で、この致死的暇から逃れる糸口をつかんだ。
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その「ある事」とは、「今まで触った事のない原料を既存サンプルに混ぜてみる」という基礎検討だ。
サンプルを使った遊びとも言うし、前検討のスクリーニングともいう。
これがすごく楽しかった。
やる前は「くそだるいな」とか思っていたが、いざ「やります」と言ってやらざるを得ない状況に嵌り込んでしまった。
手を付けないわけにはいかなくなり、手始めに原料を2種類、嫌々触ってみた。
するとどうだろう。
混ざる混ざらないの結果がハッキリと分かり、わあっと心が華やいだ。
また、これまでにやった事がない実験なので、うまくスクリーニングが出来るように系自体を組み立てる必要があった。
結果が一目で分かるように試薬量を粗削りに最適化していく。その過程が、何とも言えない進捗感と達成感を生んでくれた。
思うに、今までは実験の系が大きくなりすぎて、小粒の結果が1日に何回も出るという体験が無くなっていた。
確かに大きな結果は出るけれど、結果の数と頻度が少なすぎて、進捗感が薄れていたのだろう。
だから、「実験=だるい」という思考にハマり込んでしまい、暇な時に実験したいと思えなくなっていた。
1日に何度もパラメータを振れる事が、こんなにも楽しいとは思わなかった。
久々に、入社1~2年目の実験が楽しかった日々を思い出した
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何回も書いているように、企業の研究開発は「暇⇔忙しい」のシーソーゲームだ。
僕はずっと動いていたいタイプの人間なので、暇な時が苦痛だ。
しかし暇には魔力(というか毒)があって、暇の毒気に当たると簡単には抜け出せなくなる。
(ここで『暇だから新しい事をしよう』『暇だから調べ物をしよう』と即座に動ける人ほど、研究開発の素質があると僕は思う)
皆様も「やる事がなく暇で死にそう」という状態に陥る時があると思う。
暇の毒気に当たってしまった時の対処法の1つとして、「使ったことのない原料を用いて、サンプルで小スケールの検討を数多くこなしてみる」事をおススメしたいし、僕自身の処方箋として覚えておきたい。
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