研究開発一本に絞った将来のキャリアが見えなくなりつつある。


これまでの当社における研究開発を専門とするキャリアパスには、海外留学が必須だった。
知識と経験を蓄え、一ヶ所に留まる準備をする意味合いが強かった。
修士号ではあるが、その分野の最先端の大学の号も手に入り、一人材としても箔が付いた。

しかし、コロナ禍で全てが変わった。
海外留学の話は全て立ち消えてしまった。
世間ではオンライン留学が実現しつつあるが、当社でそうした話は一切出てこない。

問題なのは、コロナ禍が収束してからの未来だ。
当社は以前から研究開発には消極的な部分があり、海外留学の制度が改正され、留学の門戸が年々狭くなっていた。
コロナ禍で立ち消えた留学の話は、そのまま放置されるだろう。復活はないと強く感じる。
「経費食い」の海外留学を中止したい上層部にとって、このコロナ禍がいいきっかけになったのだろう。


コロナ禍で物理的な移動が制限される中、研究所員はますます研究所に籠りきりになっている。
僕はずっと今の研究所にいたい、という希望を出しているからノーカウントとしても、研究所員の異動の数は目に見えて少なくなった。
従来の1/10くらいだろうか。


外部の知識がほぼ得られず、他の生産拠点に異動することもなく、ずっと一ヶ所に籠りきる。
こんな将来性のないキャリアプランが現実味を帯びてきた。
このような状況では、研究者として世を渡るのに必要なスキル(や肩書)を得るのは難しいだろうし、社内出世もほどほどの所までしか到達できないだろう。


僕はそれでいい。
元々目立つのは好きではないし、出世に伴う重圧と束縛よりも、給料は少なくていいから自由でいたい。
今の会社にできる限りしがみつき、もしダメになったら農業でもしたいな、と思っている。

しかし、研究1本でキャリアアップを目指したい若い方々においては、慎重に考えた方がいい現象だと思う。
研究への投資に消極的な企業は、このコロナ禍を理由にますます投資を絞るだろう。
一方で、コロナ禍だからこそ積極的に人材育成の土台を固めている企業もあると聞く。
要は二分化が進んでいるのだ。


では、研究者に投資してくれる「アタリ」の会社をどうやって見極めるか。
その会社に勤める若手社員に直接聞くのが一番だと、僕は思う。
就活での企業説明会でよくある"座談会"で聞くのが一番手っ取り早い。
コツは「入社2~5年目辺りの先輩」に話を聞く事。
入社1年目では社内事情を掴みきれていない。
一方で入社して6年も経つと、早い人は昇進し、会社の利益を考えて内実を話しにくくなっている。


研究1本でも、ある程度のキャリアパスを歩むことはできる。
しかし、キャリア"アップ"となると話は別だ。
一ヶ所でひたすら技術と経験則を練り上げて、外部の情報はデータから類推する。そんな"地味"な未来が待っている(かもしれない)。

しかし、ものは考えようで、僕みたいに「仕事は程々でいい。異動したくない。のんびりまったり田舎ライフを過ごしたい」という人にとっては、研究開発はますます願ったり叶ったりの場所になると感じている。