今から、とても恥ずかしい話をする。
仕事をサボっていたのが露見した話だ。


僕の部署は、扱う化学薬品全てのSDS(安全データシート;化学薬品の安全性や取扱い方を示した説明書みたいなもの)を保持・保管するように取り決めている。
その対象には、高分子量の樹脂だったり、メーカーのサンプル品も含まれる。
そうした「試薬でない製品」のSDSを揃えるには、メーカーに逐一問い合わせねばならない。これが結構な骨だ。
危険性が極めて低い樹脂にもSDSは必要なのか?とか考え出すと、SDSを揃えるのがすごく面倒くさくなる。

この"SDS全揃え制度"はつい最近導入されたものだ。
なので、制度導入以前の前任者が揃えた試薬には、尽くSDSが添付されていない。
廃番かもしれない古い試薬なので、メーカーに問合せて取り寄せるのは更に面倒くさい。
そうした面倒くささに負けて、僕は今まで「SDSを揃えたふり」をしていた。


その「揃えたふり」が露見してしまった。
新しく薬品管理の担当になった方が、思った以上にきっちり確認をする方で、SDSが揃っていないことに気付いてしまったのだ。
(なお、僕だけでなく、他の方々も同様の指摘を受けていた。みんな内心では「だるいなぁ。やった体にしておこう」と思っていたのだろうか)

...そこから先は、ご察しの通り、今まで溜めに溜めた未所有のSDSを、1つ1つ揃えていかねばならず
SDSが揃わない薬品は処分せねばならず、共同作業者の方にも負担をかけてしまい、本当に申し訳ないやら情けないやらで消えたくなった。

-------

恥ずかしい話、僕はこういった面倒くさい決まり事はなるべく最小限でスルーしておくのが効率化だと考えていた。
「10年前の試薬など誰も使わないだろう」「試薬を使う際にSDSをネットで拾えば事足りる」
そう思い、手間がかかる正規の手続きを踏まなかったのだ。

しかし組織に身を置いて実感するのは「こうしたスルーはいつか露見する」という事だ。
年次が上がるにつれて誤魔化しが効かなくなり、過去のサボりを隠し切れなくなり(そして良心の呵責も年々強くなり)、どんどん居心地が悪くなってしまう。

特に研究開発は「研究」という行為を大学院から引き継ぐので、学生気分まで一緒に持ってきてしまいがちになる。
しかし、上記の"SDS全揃え制度"のような面倒くさい決まり事の多さは、学生時の比ではない。
学生時であれば、面倒くさい事をパスしても、多少は大目に見てくれた。
なので、研究開発に配属された時も、つい「面倒事はサボる」選択をしてしまいがちだ。
一度犯したズルは癖になる。そして、犯したズルは隠し続けなければならない。
ここに落とし穴があるな、と個人的に感じた。


2~3年でその組織を去るのであれば、多少のズルも隠しきれるのかもしれない。
しかし、未来の事は誰にも分からない。
かつては自分も、今の会社に長く身を置くつもりはなかった。
しかし、気づけばもう何年も今の会社にいる。
一ヶ所に留まる方が力を発揮できるタイプだと気付いたのは、入社後数年経ってからだった。


今現在の自分が思っている以上に、自分の未来は不確定だ。
未来が不確定である以上、居心地を良くすることに多少の投資をしておくべきだ、と切に思う。
その有益な方法の1つが「やるべき事はちゃんとやり、後ろめたさがないようにしておく」だと痛感している。


これまでサボっていてごめんなさい。
今、真人間として生まれ変わろうとしている最中です。