朝イチのダルい時間帯に実験をせねばならない時、ぬくぬくとデスクに座っている上司を見ると、ついイラっとしてしまう。


僕ら研究員の下っ端は、何だかんだで毎日動き回っている。

週5日のうち、だいたい4日は実験が入っている。
実験の準備は朝一番で行う。
その後は実験の面倒を見ながら、デスクワークで書類を作る。
特許調査もやらねばならない、実験計画も立てなきゃならない。
何だかんだで息つく暇もない。気づけばお昼、夕方だ。


しかし、管理職になったらなったで、下っ端とは別の苦労がありそうだ。

僕の職場の管理職の方々は、いずれも夜遅くまで職場に残っている。
週に1回は、朝から晩まで会議に出ずっぱり。
装置の緊急トラブルが発生した時は、昼休み中にもかかわらず現場に急行していた。
工場側や労働組合との「付き合い」にも多くの時間が割かれている。
慎重な気遣いをせねばならない気苦労が、見ているだけで伝わってくる。

ちなみに当社の管理職は、自ら実験する事はほぼ無く、実験の計画すらも組まない。
実験に携わるのはヒラの最上格(主任とか主査とかいうあの役職)まで。
チームリーダーの主任・主査が実験計画を組んで、それより下の研究員(学卒だったり高卒だったり)が実際に手を動かす。
しかし実際は人手が足りず、主査主任レベルが実験をすることも多々ある。
そして管理職のいないチームでは、主査主任が管理職の役目も果たさねばならない。


現場と管理を行ったり来たり。それでいて給料は変わらない。
個人的に見ていて一番つらいのは、この主査主任レベル=ヒラの最上級だと切に思う。

昔は「主査・主任が一番いいよな」と言われていた時期もあったようで。
というのも、昔は残業を好きなだけ(少々語弊があるが)つけられた時代で、昇級とともに残業代も上がるが、管理職になると残業代が支払われなくなる。
故に、ヒラの最上級である主査主任が、残業代で一番儲かる、という理屈だった。


しかし今は、コストカットの嵐で残業は厳格な規制がかかっている(当研究所は5時間/月!)。
なので、上記の主査主任のメリットは吹き飛んだ。


話を元に戻すと、ヒラ社員・管理職ともに、良い所もあり悪い所もある。
どの立場においても、長所と同じだけの短所がある。
要はその長所短所を自分の価値観に通した際、どれだけのプラスマイナスが生まれるか、という事だ。

僕は何より残業が嫌だ。突発的に仕事が入るのが嫌だ。気遣い気苦労が嫌だ。
だから、自由に動ける今のヒラ社員の立場の方が良い...はずだ。

それでもやっぱり、朝の気怠い時間帯に気力を振り絞って実験に取り掛かると、隣でぬくぬくデスクワークしている上司をつい目の敵にしてしまう。

オチは特にない。