研究開発ほど、自分の力で「暇」か「やりがいがある」か決まる職業も無いと思っている

研究開発で数年も働くと、仕事を投げられる機会が減ってくる。
1年目はほぼ100%が与えられた仕事なのに対して、5年目にもなると50%は自分で決めた仕事をやる。
早い所では1年目の後半から、何をすべきかの裁量が与えられる事すらある。


研究員の仕事は、大きく分けて「現行品の改良」「新規製品の開発」の2つだ。
現行品の改良≒トラブル対応であり、顧客とのパイプを持つ上司から仕事が下りてくる。

一方、新規製品の開発は「○○という性能が欲しい」とザックリしたコンセプトが下りてきて、それを実現する手法は各研究員(下っ端)に任せる、というスタンスだ。

新規製品の開発をスムースに行わせるため、研究所の業務には割と余裕がある。
考えるのも仕事、というわけだ。


さて、新規製品を開発すると一口に言ったが、できる事は本当に限られている。
どうしても、今ある機器と薬品を使って、自社で積んだ限られた経験を基に反応系を組むことになる。
すなわち、今までとほぼ同じスキームにならざるを得ない。
なので極端な話、これまでの反応系をそっくりそのまま受け継いで、原料の配合比だけを変えるのが、一番簡便に「それなりのもの」ができる手法...と言えてしまう。


ある意味一番盤石な手法だが、この手法に頼り切ってしまうと、研究開発の仕事はクソほど暇になる。
論文で新しい知見を調べる必要はないし、業界雑誌などで市場調査をする必要も無いからだ。
空いた時間は休憩所へまっしぐら、あるいはスマホゲーをしたりLINEに耽ったりして、ただ時間を潰すだけになる。


また、上記の手法では、変えるパラメータが原料の配合比しかないため、どこかで手詰まりになる。
超えられない壁があるのを確かに感じるようになる。


一方、手持ちにある機器・薬品を使いつつ、これまでにない高性能を叩き出す事を夢見れば、仕事は一転して面白くなる。

手持ちの資産のワクの中で、高性能・新規性を出すにはどうすればいいのか。
ヒントは過去の知見の中にある。
論文を読んで、一度その知見を転用するアイデアを得たならば、その時の快感が頭から離れなくなる。
空き時間は、論文や業界雑誌を調べるボーナスタイムと化し、調べた事が仕事に直結する面白さが病みつきになる。


...というのは少々盛りすぎかもしれないが、少なくとも暇だと感じる頻度は劇的に減る。
やりがいがあれば暇は暇でなくなるし、やりがいが無ければ余裕は暇に転化する。


僕の場合は、論文を引くことが研究所の役に立っていると実感したことが、やりがいアップにつながった。
僕はプライベートで英語を(軽く)勉強しているが、その英語力で文献を読んで、新しいアイデアを練ったり、業界の動向を同僚に伝えたりすると、何だか胸が温かくなった。


最近ブログの更新頻度が減っているのは、それだけ仕事にかける熱量が増えた、という事なのかもしれない。
というオチ。