2020年は、良くも悪くも現場を主軸にした1年だった。


良かった点は、独りよがりの研究開発にならずに済んだことだ。

市場が求めているモノの実現に向けてストレートにアプローチできた感はある。
また、上司の意向を汲み取り、営業の方々の意見も取り入れ。一緒に実験をする同僚とそれなりにコミュニケーションも取り。
「世の中・周りの人々なんか知ったこっちゃない、僕が研究したい事をするんだ」的な独りよがりには陥らなかった(と思う)。

結果としては、手掛けた試作品が2件、大手ユーザーに採用になった。
今まで感じた事のない類の熱さを胸の中に感じた。


悪かった点は、あまりにも机上の学びを軽視しすぎた事だ。
「現場で起こっている事さえ見れば全て解決できる」と思い込み、文献を読む・特許を調べるなどの「R&Dの基本」を疎かにした。
論文をいくら読んでも研究力に結び付かなかった入社3~4年次の反省(もといリバウンド)からこうなったのだが、それにしてもやりすぎた。

このような基本の手抜きは、なかなか自覚できないからこそ恐ろしい。
僕が気付いたのは、年末のテーマ提案を練っていた時だ。
最初は「ダルいし、去年のテーマの延長で出せばいいや」と考えてしまい、手抜きのテーマを3件出した。

その後、評定面談があり、上司から「若手に良い背中を見せられるようになれ」と言われた。
この一言を振り返って、「そういえば最近、論文読んでないなぁ」と胸が痛み、文献検索ソフトに手を伸ばしてみた。

するとまあ、論文が面白い面白い。
アイデアが次から次へと湧き出してきて、2件のテーマを追加で提出した。
自分で言うのもアレだが、追加で出したテーマの輝き具合は、その前に惰性で出した3件の比ではないと感じた。



新しい風を入れないと、ジュクジュクと腐りゆくのみだと痛感した。
研究テーマを考えるのがダルいと感じた自分がいて、しかもそれに違和感を感じなかった自分がいた。
このまま放っておいたらどうなっただろう。

幸運だったのは、上司の一言で「偶然」論文に手を出せた事だ。
他人からの助言や忠告を受け止め、飲み込み、実際に行動の改善までやりとげる素直さが(微かながら)あった。
これが、僕をギリギリのところで助け出してくれた。


僕はバカなので、言われた時点・気づいた時点で、意地を張らずに変更方向へ舵を切る素直さが必要のようだ。