研究開発の現場で働き続けて思うのは、強靭な足腰と心身の持久力が不可欠だということだ。


僕は高分子を研究開発している。
"高分子"と言えば聞こえはいいが、要はプラスチック・樹脂というマスプロ関係だ。

マスプロの現場は泥臭い。
少なくとも当社の場合は、研究の段階で、文字通りドロドロになる。
ヘルメットを被り、何十リットルスケールの製造釜のバルブを開け閉めし、10kg単位の樹脂原体を次から次へと放り込む。
もちろん白衣ではなく作業服。
新品の作業服も、3ヶ月も経てば機械油と樹脂汚れで真っ黒になる。


こういった現場では、えてして強い足腰が求められる。
製造機械は2~3階建ての高さに相当するので、階段を使って何回も昇降する。
10kg単位の重量物を持ちつつ、素早く(そして安全に)昇り降りしなくてはならない。

そして地味にきついのが、実験室間の移動だ。
安全確保のため、製造機械や実験室は、居室から離れた位置にある事が多い。
なので、反応の確認や原料の準備の際、数百メートルの距離を何往復も、多い時には何十往復もしなければならない。

そして、足元は鉄板入りの重い安全靴である。
ちなみに、僕の履いている安全靴は1kg強。普通のスニーカーの3倍の重さだ。


僕は陸上競技をしていて、体力には余裕があるつもりだった。
それでも最初の1年は、ただ歩くだけで疲れ切ってしまった。
作業を繰り返すうち、身体が疲れるに伴い頭も疲れて、何も思考できなくなってしまったのだ。


研究開発に身を置くならば、頭のどこかで常に思考を育んでおくべきだ。
今やっている実験のアイデアを練ったり、次のテーマに思いを馳せたり...。こんな薬品が使える、隣のグループのアレを借りてこようか...
こうした思考の遊びが、ちょっとした変化に気付かせてくれたり、打開策を閃かせてくれる。


なので、「重い物を持って移動し続けられる足腰」「どれだけ使ってもどこかに余裕を持てる心身のスタミナ」があれば理想的だ。
そして、これらを同時に育めるのが登山、だと思うのだ。


言うまでもなく、登山では足腰を使う。
重いザックを背負って、ゴツゴツした足元をひたすらに登る。

そして、登山では五感を総動員する。
道に迷わないように、地図と景色を見比べて、自分の位置を把握する。
虫が襲ってこないか、滑落しないか、足は疲れすぎていないか...自分の内外に気を配り続ける必要がある。


実際僕も、ランニング一辺倒だった時よりも、こういった総合的な鍛錬をやった時の方が、心身共にフットワークが軽くなり、いい仕事ができるようになった。
いわゆる"トレーニング"と呼ばれる単調な種目よりも、様々な要素が組み合わされた複合的な運動の方が良かった。


もしR&Dでハキハキと働きたいのであれば、僕は登山をおススメしたい。