僕は職場の人間関係にすごく恵まれている。


僕の勤める研究所は少人数のチームが実働単位になっている。大体、各チーム3~5人程度だろうか。チーム員の方々には、本当にお世話になりっぱなしだ。
特に、僕より10歳年上の方(Mr.ビーンにそっくりなので、以下ビーンさんと略す)は、僕の至らない所を尽く補ってくださる。

ビーンさんはアラフォーで、人生的には僕の大先輩だ。
ちょっと頭が薄くなり、お腹に肉もついてきて、学生時代に出会った奥さんととても仲良くやっている。ちょっと間が抜けているところがあり、とても穏やかな方だ。

ビーンさんは、実験設備の組立てがとても得意だ。
学生時代は土木・建築関係をやっていたらしく、身体を動かして何かを組み上げるのが好きだそう。僕の気が付いた時には、実験室の改良を一人でやってくれている。
面倒くさがりな僕とは大違いだ。
なので、僕はいつも申し訳なく思いつつ、家に帰って晩飯を食べながら、ビーンさんの温かさに感謝する。そして、少しは手伝えることがないかな、と思いながら、ビーンさんの仕事場をうろちょろする。しかし、その場で手伝うよりも、ビーンさんの抱えている実験を代わりにやった方が役に立つと判断し、結局僕は実験をする。


...そんな働き者のビーンさんだが、実験自体はあまりお得意ではないようだ。
結果を集めて、分析して、仮説を立てて、結論付ける。このサイクルを回すのは苦手な様子だ。また、スケジューリングも苦手なようで、時々ミーティングをすっぽかしたりもする。
これらも、推論が好きでスケジューリングが苦ではない僕とは大違いだ
だから、実験計画を立てるのは僕の役目になっているし、会議の前はそれとなくビーンさんにリマインドをしている。

また、ビーンさんは典型的な"やりっぱなし、出しっぱなし"の人で、作業後に工具や布切れを放置したままになっていたり、実験した器具の洗浄が途中でほったらかしになっていたりする。僕もかなりの面倒くさがりだが、ビーンさんほどではないので、ぶーぶー文句を垂れながら、ビーンさんの後片付け役に回っている。


...自分の得意を活かす、とはこういう事なのかもしれない。
一緒にタッグを組む方々がいて、その方々が苦手、あるいはできていない所に自分が飛び込む、という形で初めて成り立つのだと。
補えるという事は、少なからず(少なくともタッグを組んでいる人よりは)デキる、という事であり、補っていくうちに「これが自分の得意...なのかな?」とじわじわ分かってくる。

少なくとも僕は、ビーンさんと組むまでは、自分のスケジューリング能力がどれほどのものか把握できていなかったし、思ったよりも掃除が出来るのだと気付いていなかった。


今思っているのは、決して「僕は○○が得意だ!だからこれをやらせてほしい」と周囲にアピールするという形ではない、ということだ。
それは単なるわがままである。

そして、仮にアピールして仕事を掴んだとしても、それは思ったよりも味気なく感じるものだという事に、最近気づいた。


僕が出来ない事を平然とやってくださるチーム員の方々に、僕は頭が上がらない。
こんな温かい場所で働ける僕は、すごく恵まれている。
研究開発という、ノルマと〆切からある意味隔絶された場だからこそ、そこで働く人も温かくなるのかもしれない。