最近、新規案件で作った製品をお客さんへ紹介する機会が増えた。

今流行りのweb面談とやらで、月に3~4回は客先の担当者に製品を紹介している。
紹介に使う資料は自分で作る。写真も自分で撮り、一通り体裁を整えてから、上司の添削が入る。
毎週卒論を作っているような感覚に陥る。

卒論と違う点は、徹底してお客さんの目を意識せねばならない点だ。
具体的には
・これまでの経緯を省略せずきちんと説明し
・一読して分かる
要は「この説明は無くても分かるだろう」を極力なくすという事だ。バカ丁寧に説明するバカに徹して、ようやく「何とかついていける」レベルになる。社会人はそれだけ忙しいし、自分の頭で解釈する余力が残っていないのだ。


お客さんの目線に立つ、ということは、お客さんが社会人であるという事、則ち異種の刺激に拒否反応を示す疲れ切った一人の大人だと想定する事である。


こうした想定の下、資料を書き上げていくと、何とも言えない無力感に襲われる。出来上がった資料は、これまでの経緯が半分以上を占め、理論的な説明は丸投げで、実験自体もとても簡素なものになる。例えるならば、中高生の自由研究レポートレベルの簡単さに収まる。「こんなお子様向けの資料を作るために、理系の大学院を出て、研究開発職に就いたのか...」と、嘆きたくなる。


しかし実際は、その程度のクオリティで十分で、丁寧に作り込まれた資料は疎まれる。
逆の立場に立ってほしい。登場人物が何十人と現れ、伏線がたっぷり張られ、難解なトリックを用いた推理小説。それを試験前日に読みたい人はいるだろうか?
僕ならば、まず読まない。というか脳疲労と寝不足で読めない。気晴らしに読むとしても、せいぜい4~5ページの短編集だろう。


この疲れ切った社会では、手を抜きすぎる位が自分にも相手にも丁度いいのだ


疲れ切った大人を相手にした理系的資料を作るには、以下のスキルを磨いておくといい
・これまでの経緯を数行でまとめられる編集力
・相手が飛びつく情報を把握し、資料の主役に据える力
・ちゃんとした写真を撮る技術

理系のラボであれば、学部生時から十分鍛えられるスキルである。