センスはトレーニングで創り出す事ができる、と僕は考える。その際のトレーニング方法は、一般にイメージされる"トレーニング"とは異なる。

パッとイメージするトレーニングとは「単純なパターンを繰り返す」事だろう。英単語を暗記する、ピアノでバイエルを繰り返す、筋トレでダンベルを上げ下げし続ける...。
センスを創り出すトレーニングは、その真逆に位置する。


センスとは色々な動きが高い精度・パワー・スピードで実現できることだ。なので様々な動きに触れる(触れるという優しい表現が合致するかは分からないが)事が肝要だ。

具体的なトレーニング方法としては
・反復回数をなるべく少なくし(5回程度を1~2setでok、それ以上やるとインプットに偏り多様性のスイッチが切れる)
・出来る限りのスピード・パワーを持って
・多種目(少なくとも5種目前後?)をこなす
これが現時点での僕のベストアンサーだ。


しかし様々な動きを爆発的なパワー・スピードでやるだけでは、センスは磨かれない。僕自身、スポーツのセンスを養いたいと思い、とにかく様々な動き"だけ"をバンバンやっていた時期があったのだが、不思議な事に何も身につかなかった。やったらやった分だけ、身体から何かが流れ出て、何も根付かない嫌な感覚があった。



様々な動きを定着させるには、動きを解釈する"コンテクスト"が要る、というのが僕の結論だ。コンテクストという表現が分かり辛ければ、"柱""背骨"と表現しても差し支えない。
様々な動きは、文字通り共通性が無くバラバラだ。それらを取りまとめ、身体が紡ぐ物語に仕上げるのがコンテクストである。


トレーニングにおけるコンテクストとは、習熟した種目の事である。じっくりと時間をかけて反復し、動きが身体に馴染み、意識次第でどの部位にも利かせられるまで昇華した種目だ。身体に染み付いているからこそ、他の動きで得た単発の感覚を、その内に取り込み、感覚の引き出しにしまい込むことが出来る。


他の目的(例えば競技種目)にトレーニングのコンテクストを使う場合、コンテクストとする種目は、目的とするそのものから少しズレていた方が良い。飛び石を踏んで川を渡る際、飛び石が真っすぐに置いてあるよりも、斜め前においてある方が、ジグザグにジャンプして前に進みやすい。どうやらトレーニングと専門種目の関係も、これと同じらしい。

僕自身の経験では、TOEICの勉強でも、TOEICの問題そのものをリピートしてコンテクストとした時よりも、他のニュース音声を反復してコンテクストとした方が、TOEICの点は良くなった。
陸上競技でも、100m専門だからと100mを全力で走る練習を繰り返すよりも、300m走を取り入れた方が、100mのタイムが上がった。
少しズレた所に位置する種目(ニュース音声、300m走)がコンテクストとなったのであろう。



センスを創り出すには、まず、何か1つ(多くても2~3種目)をピックアップし、丹念に繰り返して核とする必要がある。せっかく繰り返す種目なのだから、少しでも長続きできそうな、好きな種目を選びたい。