学生・院生の立場からすると、R&Dの花形は基礎研究で、開発=泥臭いというイメージが強いです。

私も入社まではそうでした。

できれば開発は避けたいとも思っていました。

 

しかし、開発の経験を重ねる中で、ルールに縛られないという開発の醍醐味が病みつきになりつつあります。

 

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■僕が5年間でどのように新製品をつくりあげたか

 

僕が入社1年目からスタートした試作品が、5年かかってようやく、ユーザー採用に至りました。

その間に僕がやった事は、「とにかく現場でデータを拾う→パラメータを1つ変えてすり合わせる」でした。

 

僕が手掛けたのは、ある樹脂製品。

まずは、一番シンプルな形で、反応系をざっくりと組み上げました。

 

・樹脂×1

・溶剤×1

・モノマー×1

 

のみの、これ以上ないシンプルな系でした。

 

これを起点として、反応を実行しました。

すると、

 

・反応が上手く進まなかった

・↑をクリアすると、次は樹脂溶液がうまく混ざらなかった

・↑をクリアしても、次は樹脂が粒子としてまとまってくれなかった

・↑をクリアしても、ユーザーの用途でうまく性能が出なかった

 

反応を実行→これらの障害がある事を把握→パラメータを1つ変えて現場で変化を観察...5年間ひたすら繰り返しました。

 

そして、

・樹脂とモノマーの比率を○○だけ変えれば反応が上手くいく傾向にある

・反応温度を△△度にすると、樹脂溶液が安定になる

 

などという形で現象を把握していきました。

 

まるでジグソーパズルのピースを11つ拾い集めていくような、地道な作業でした。

しかし、見出した法則を積み上げていき、目の前で起こる現象を理解していくステップは、とてもやりがいがありました。

 

 

■内々で通じる法則の形で突き進むことが出来る

 

僕が感じた強いやりがいの根源は「血の通った思考ができたから」だと感じています。

 

僕は、見出した法則を、文献で見るような「綺麗な形の一般則」に言い換えることはしませんでした。

教科書言葉に言い換えないことで、自分が一番理解しやすい形で思考できました。

 

このような「血の通った思考」をすると、確かな手ごたえがあり、やりがいがこみ上げてきます。

 

本来の「学び」とはこのような形だったはずです。

 

 

■「分かる」が好きな人こそ向いている

 

僕がR&Dの世界に身を置いて感じることは、「起こった結果を法則として受け入れられる人が強い」ということです。

見合った理論が世の中になくとも、事実をまず受け入れて、そこからスタートできる人です。

 

更に、僕が最強だと感じているのは、見出した法則を積み上げていき、目の前の現象をコントロールする術が「分かる」まで昇華できる人です。

こうなるには、「教科書には○○と書いているけど、僕の系では△△なんだよね」と、厚みのある前例をあっさりと無視できる軽やかさが必要です。

 

理論と照らし合わせて説明するのは下手。でも自分の中ではハッキリ分かっているまで落とし込む。

そんな人こそ、R&Dで結果が出せますし、なにより面白く研究開発を進められると感じています。

 

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「勉強は好きだが実験は嫌い」よりも、「勉強が苦手だが実験が好き」の方が、R&Dには向いていると感じています。

既存のルールに縛られず、自分ルールで良いモノを目指せる。

この面白さを、1人でも多くの方に知ってもらいたいです。