溶液論の教科書を読み進める中で、ビリアル展開後の式を解釈する面白い観点を発見しました。


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浸透圧や粘度など、分子の量が関与する物理現象においては、解析を容易にするため「ビリアル展開」が行われます。


ビリアル展開とは、変数をべき展開して、乗数の集まりにしてしまうことです。

乗数の集まりにした後で、極限状態(例えば濃度→0)を仮定してやれば、乗数の大半は「無視できるほど小さくなる」ので、非常に単純な数に落とし込めるというカラクリです。

 

以下に、ビリアル展開した式を2例ほど載せました。

 

20191205_ビリアル

例えば、図の式①において、濃度→0の非常に希薄な溶液においては、濃度の2乗以降は「ほぼゼロ」とみなせるので、1/M×Cさえ計算すれば良いことになります。

 

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前置きが長くなってしまいましたが、私が発見(?)した「面白い観点」について述べます。

 

それは、「ビリアル展開後の式において、各項は「個数の決まった分子間の相互作用」を表す」という解釈です。

 

私が読んだ溶液論の本によると、ビリアル展開後の式においては、[相互作用を表す量]×[相互作用に関わる分子の個数を表す量]で分子間の相互作用を表現しているとのこと。

 

具体的には、

[1分子の作用][1分子の作用量]×[1分子の数]

[2分子の相互作用][2分子間の相互作用量]×[2分子の数]

[3分子の相互作用][3分子間の相互作用量]×[3分子の数]...

という具合に、です。

 

[相互作用を表す量]は、係数で表されています。

一方で、「分子の個数を示す量」は、濃度のn乗(nは相互作用に関わる分子の数)で表されます。



この解釈に沿ってビリアル展開後の式を見てみると、一般に言われることと一致点が多くて驚きました。

例えば、浸透圧のビリアル展開における第2ビリアル係数(図中B1)は、2分子間の排除体積効果を表すと一般に言われています。

また、比粘度のビリアル展開における第1係数(式中[η])は、「極限粘度」と呼ばれ、溶媒中において1分子が寄与する粘度を表します。

 

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なかなか面白い解釈(本質を突いた?)で、単に公式に則り展開するだけでなく、式をより身近なものに感じさせてくれる観点でした。

私が不勉強なだけで、この観点は一般的なものである可能性もありますが(むしろその可能性の方が大きい?)

 

「今更。もう知っとるわ!」というご意見が大半を占めそうですが、個人的には大発見だったので、シェアすることにいたしました。

 

 

今回読んでいた溶液論の本です。

基礎基本が充実しており、かつ高分子溶液などニッチな分野もカバーされており、とても使い勝手のいい良書でおススメでした。