ポリマーは多くの化学メーカーで作られているが、その主要用途に「塗料」がある。

塗料は、日本の産業の中核となる自動車業界で多量に使われている。

なので、ある程度の規模の化学メーカーでは、塗料対応部署がある所が非常に多い。

自動車産業はあらゆる業界と密接につながっているのを実感する。

 

ここで問題となるのが、化学メーカーに勤める僕たちが開発したポリマーを、顧客にどうやって売り込むか、ということ。

 

答えは「『うちのポリマーを配合したら、これだけの性能アップが見込まれますよ』というデータを顧客に見せる」。

ビジネスの世界では、データ無しでは何も動かない。

なので、説得力のあるデータを集めるために、開発側が塗料を作り、手を動かして塗装をする必要がある。

 

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塗装は思った以上に難しい。

研究開発における小スケールでの塗装には「スプレーガン」による吹付け塗装が好まれる。

このスプレーガン、素人のやり方では、塗りムラが強く出てしまい、均一に塗ることができない。

また、何のために着いているのか分からないネジが何本もあり、出力の調整も難しいシロモノだ。

 

 

今回、そんなスプレーガンを扱うのに最適の良書を見つけた。

「基礎をしっかりマスター ココからはじめる塗装(坪田実著)」という技術書だ。




 

この本には、あらゆる塗装の基礎基本が、シンプルかつ明瞭に描かれている。

塗装工具に関しても、知りたい構造が簡潔かつ明快に記されているので、サッと目を通すだけでも理解できるようになっている。

 

例えば、スプレーガンにはネジが複数ついているが、僕はそのネジが何を調節するのか分からず、怖くていじれなかった。

しかしこの本を読んでからは、後ろのでかいネジを調節して吹付量をコントロールできるようになった。

今では、塗料のクセに応じてガンを調節し、綺麗な塗膜をつくれるようになった。

 

 

また、吹付の軌跡が図解入りで描かれていたのは本当に役立った。

スプレーガンは職人芸的な部分が大きい。

とりわけ、吹付ける際にスプレーガンをどう動かして塗っていけばいいのかに関しては、各先輩の腕ひとつだ。

「現場で盗め」が苦手な自分は、どうにも習熟が遅かった。

 

しかし、この本のイラスト通りにやると、今まで作れたことのない綺麗な塗膜が一回で作製できた。

先輩に教えられたやり方と比較することで、より良い塗装方法に仕上げられると実感できた。

 

 

この本で、とりわけ役に立ったと僕が感じたのは、以下の3章だ。

 

 ・スプレーガンの構造と使用方法

 ・欠陥を防ぐ塗装の極意

 ・スプレーガンの名手になるには

 

これら3章に出会えただけでも、この本を購入した価値があった。

 

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研究者の方々においては、今まで塗料を扱ったことすら無い方が大半だと思う。

そういった方々も、将来の予習を兼ねて、一読してはいかがだろうか。