役職付きの方々は、理系の素養はあるが、我々の研究テーマに関しては素人だ。
このような方々に対して、どうすれば聞く耳を持ってもらえるのか。
発表を重ねて分かったことは、研究開発のプレゼンにおいては、年配の方々に「おっ、こいつの発表は分かりやすいぞ」と感じさせる事が決定的に大事だということだ。
以下に、僕が試して効果のあった「年配のお偉いさん方が、一回聞いてすんなりと大意が理解できる発表」に仕上げるコツを列記する。
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〇事前準備編
分かりやすい発表は、分かりやすいイントロを作ることに尽きる。
理解しやすいイントロを作るために、まずはバックグラウンドを多方面から理解しておこう。
キモは「多方面から」理解することだ。
私は、2×2の4要素に分けて考えると、多方面から理解しやすかった。
・「縦の方向(時系列)」、「横の方向(同時代における他者/自分の検討)」
・「自分以外の他者」「自分自身の研究」
具体的には、
・業界・分野の歴史とトレンド(縦の方向、他者)
・類似の研究内容(横の方向、他者)
・これまでの検討の歴史(縦の方向、自分)
・自社/自ラボの類似研究(横の方向、自分)
こうすることで、「なぜこの研究をするに至ったのか」というお偉いさん方の疑念を払しょく可能な説得力が生まれ得る。
〇スライド作成編
分かりやすさを際立たせるには、「この研究の立ち位置」を理解してもらう必要がある。
以下の3点が要点。
・1枚1分が目安
・イントロに全体の半分を割り振る勢いで
・実験手順、具体的な手法をイラスト付きで説明する
コツとしては、イントロに可能な限りの力を注ぐこと。
対照的に、自分自身の研究の成果は、ワンメッセージ程度で十分だ。
〇手直し編
お偉いさん方の思考パターンに沿うように仕上げるのも、分かりやすさを追求するうえで欠かせない。
そのために、上の立場の方々に計3回は見てもらおう。
自分一人で作成したスライドは、どうしても独りよがりになってしまう。
私の場合、万人に分かりやすく仕上げるためには、発表慣れした上司に見てもらうのが一番だった。
人選のポイントは、分野の全体像を俯瞰できるレベルの人を選ぶこと。
視点のバラつきを均すため、なるべく複数人に手直しをしてもらおう。
〇発表編
お偉いさん方は、若々しくみずみずしい発表スタイルを好む。
抑揚に富んだ喋り方・なめらかな身振り手振りがあれば、評価がグッと上がる。
活き活きとした発表に仕立てるために、何をすべきか。
僕が見出したコツは「発表本番において、思考の余力をできる限り節約できるようにする」ことだ。
具体的には、以下の3点が効いた。
・スライド上に"発表原稿"をキーワードで埋め込んでおく
・発表練習は通しで1日1回、計3日行う
・身振り手振りをしながら発表する
発表前に発表の練度を可能な限り上げておこう。
発表本番は、発表練習のパフォーマンスをただなぞるだけ。
また、発表スライドに言いたいキーワードを言いたい順に配置して、スライドを原稿化してしまうのも一手だ。
僕の場合、無駄な力が抜けた分の余力が、goodなアドリブを生み出してくれて非常に良かった。
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研究開発結果の報告は、「今までに何をやってきたのか」の確認の場でもあると実感している。
そして、「すごいことが分かった」よりも「分かりやすい」の方が聞き手に与えるインパクトが大きい場合すらある。
僕が見出したコツが、誰かの役に立てば幸いである。
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