全ての場は生き物であり、それぞれ特有の流れを感じ取ることが必須。

武道で気の流れを掴んだ経験から編み出された数々の表現には、マニュアルで固定された我々にとって、新鮮な学びが非常に多い。

 

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〇著者の紹介


この本は、2人の著者の対談形式となっている。

1人目は、フランス文学者であり、合気道を極める武道家でもある内田樹氏。

もう一人は、三軸修正法という施術の創始者で、船乗りの経歴を持つ池上六朗氏。

 

対談形式でありながら、内容の密度は薄まることなく、むしろ殆どの単著をしのぐ。

更には、読み手を配慮した具体的エピソードと簡便な記述に終始しており、一読すると要点がスッと入る仕掛けになっている。

 

 

この本の大味は、「流れに身を任せる事で、自ずと自分に合った運命が開けてくる」ということ。

今現在の自分が身を置く""は「生き物」であり、その鼓動を身体で把握する必要がある。

 

本書における「流れに身を任せながら、人生をいい方向へ進めるコツ」。

それは「他人が自分に求めてくれているもの」に正直に応える、というもの。

 

心身を整えて、いつでも要望に応えられるよう準備しておく。

そのための手段として、武道、スポーツがあるのだ。

 

 

私はこの本を読むまでは、運命は自分の手でゴリゴリ切り拓いていくものだと考えていた。

流れに身を任せると堕落する、自分らしさが無くなってしまうと思い込んでいた。

職場でも、上司が出してくれたアイデアに逆らって、独り別の仕事をしたりしていた。

 

しかし、この本を読んで、周りの方々のために何かしてみようという気になった。

ここ数ヶ月ほど、フラスコの掃除、データ整理の手伝い、懇親会の幹事など、目の前の困っている人を助けるようにした。

すると、仕事自体のキレも良くなってきた。

 

これまでの独力スタイルよりも、人生が上向いている実感がある。

 

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終身雇用が崩れようとしている今、私と同じように「独力で運命を切り拓かねば」と思う方は多いだろう。

しかし、その考えだけでは、思うように人生は進まない。

ぜひ、この本を読んで「流れに身を置く」観点のインストールも試してみてほしい。

身体の言い分(毎日文庫)
内田 樹
毎日新聞出版
2019-04-06