僕はこの本を読んだ後、プライベートで仕事の勉強をバリバリにやりたくなった。

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〇あらすじ

出版社に入社した主人公は、希望部署とは程遠いボクシング雑誌の担当に回されることに。

ひどく落ち込む主人公だったが、周りを見返したい一心でボクシングジムに入門し、しだいに良い記事が書けるようになる。

ジムで出会った期待の新人と交流するうち、諦め・悪意...といった心の闇を垣間見るようになり...

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この本で著者が伝えたかったことは、「習慣として根付かなかったとしても、それは力にならない無駄な経験ではない」という励ましだと感じた。


この本のラストで、主人公は希望の文学担当となり、ボクシングからは手を引いてしまう。

しかし主人公は、文学の取材をする中で、ボクシングを何とか分かろうとジムに通った経験や、もがき苦しみながら取材を重ねた経験...これらが活きていることを実感する。

当時の頑張りを心に抱いて、プライベートで文学のみならず、そのバックグラウンドを構成する美術を勉強したり、気難しい作家とも会食を重ねて理解を深めようとしたりして、「粘り」が出るようになった。

この主人公の成長過程を観て、僕は自分の強迫観念が溶けていくように感じて、すごく救われた。

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僕は、何かを止めるのが怖くて、ずっと続けようとしてしまう。

無理に続けようとする過程で、身体も心も疲れがたまってシンドクなり、もともと好きだったことが嫌いになってしまう。でも止められない。
 
僕の中には、「続けなければ無意味だ」という深く刷り込まれた思いがあるからだ。


しかし、この本を読んで、「今まで続けていたことを辞めても、その経験はいつまでも自分の中に残って、じわじわと活力を与え続けてくれる。だから、無理に続けようとしなくてもいいんだ」と感じることができた。

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以下、自由評論。

・ボクシングのトレーニングと試合が初心者目線で描写されており、ボクシングのルール・面白さが把握しやすい。

・選手の名前が多すぎて記憶できない。ぽっと出の選手の名前が200ページ後に突然出てきたりして、思い出せなくてややイラっとくる

・碇シンジ的なタイプの主人公。線が細い男の子が好きな人はガツンとハマれる

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〇この本を読んでほしい人はどんな人か

・希望の部署に配属されず、気落ちしている新入社員

・ボクシングの面白さ・ルールなどを理解したい人

・仕事に対する熱意が湧かず、気持ちのスイッチを入れるきっかけが欲しい人


読了後には、こころが軽くなること請け合いの作品である。


空の拳 上 (文春文庫 か 32-12)
角田 光代
文藝春秋
2015-10-09