昨日は職場の飲み会でした。

宴もたけなわになった頃、今年入社した研究員から「もう入社して半年も経っちゃいましたが、力がついた気がしない。先輩方のように仕事ができるようになるとは思えない」と相談を受けました。


ビールのグラスを握りしめるその子を見て、「いやいや、そんなことは無いよ」と思った話です。

 

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〇当研究所の新入社員は、簡単な仕事が板についてきて、働く姿にぎこちなさが無くなった

 

僕に相談を持ち掛けてくれた新人研究者は、入社してからの半年で、ルーチンの分析をもたつく事なくできるようになりました。

僕たち同僚は、最初こそヒヤヒヤしながら見ていたが、いつしか彼女が実験する姿を注視しなくなりました。

それだけ「新入社員の彼女が分析機器を触ること」が当たり前・自然になったということでした。

 

新入社員の方々が、仕事に力みが無くなり、ぎこちなさなく自然に仕事ができるようになることで、僕たちは自然と「安堵」していたのです。

 

 

〇「当たり前のことがつっかえる事なくできるようになった」は周囲に安心感を与えている

 

僕たち「先輩」たちが新入社員を見る目は、以下の2つです。

 

・「何か失敗をしでかさないか」というヒヤヒヤ感

・「こいつは何をやるつもりなのか」という一種の疑念

 

これらが無くなったということは、

 

・「失敗せずにやりきれるようになった」という技術面への信頼感

・「この子はちゃんと仕事をやりきる」という姿勢面への信頼感

 

が生まれたといえます。

 

こうして生まれた信頼感は安心感につながり、周囲の方々の支えとなります。


~緊張というのは、個体がするんだけど、その人だけではなくて、空間まで緊張させているんですよね~

(身体の言い分 P141 3章「気持ちは伝染する」より引用)


 

〇「職場に溶け込んでみえるようになった」も立派な成果の一つ

 

職場にいて違和感が無いということは、周囲に合わせた立ち居振る舞いができているということであり、すなわち期待する最低ラインをクリアした、と言えます。

 

集団内に異分子があると、その集団の機能は大きく低下してしまいます。

逆に言えば、集団が同調できれば、単なる個の集まり以上の成果が生まれます。

 

今の職場で当たり前とされている事をちゃんとできるようになる→集団の機能性を高める。

これも立派な1つの成果ではないでしょうか。


新入社員/ラボ員の皆様、安心して、半年経った自分を大いに認めてあげてください。

身体の言い分(毎日文庫)
内田 樹
毎日新聞出版
2019-04-06