質問箱で「個人で研究して特許を取り、収入を得たい」というご質問を受け、「それには実務経験があった方が良いですよ」と回答した。
実際、化学系メーカーに丸5年勤めてみて、思った以上に得るものが多かった。

…ちょっとばかり、自分の得たものについて、振り返ってみた。
以下に、僕がこの5年で得たスキル(と言えるのか…?)を列挙してみた。
何かの参考になれば幸いだし、人の経験を傍観するのはそれだけで面白い(と個人的に感じている)。

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・上の立場の人間に受け入れてもらいやすい意見の言い方
・外部の人間と失礼なく・見落としなく交渉を進める力
・正論をぶつけると物事は却って動かなくなるという達観
・力を抜いている人の裏側にある事情を汲みとろうとする姿勢
・集中の彼方から自分を呼び戻せる自己コントロール力
・特許をゼロから(何とか)書き上げる力
・1つの実験系について「○○したら△△になる」とある程度予測できる見通し力
・1つの製品の実機試作を一通りやり通せる現地力
・複数人の部下を動かして、必要な結果を得られるリード力
・案件をスムースに進めるために、雑談を交えられる判断力
・学会や報告会の口頭発表を、2週間程度で合格ラインのクオリティにもっていける力
・etc…etc….

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要は「『働くとは何ぞや』ということを、身をもって経験し続けた」ということだ

働いてみると、働くことに順応しないと生き続けていけないことに気付く。
週5日間、365日を何年も同じリズムで進み続けるためには、尖った部分を削り落とし、労働の流れに上手く身を乗せる必要がある。
その中で得た丸っこさが、上に述べた「スキル」というわけだ。

これはフルマラソンのイメージに近い。
1回に何十km、一ヶ月に数百kmと淡々と走り込む中で、自然と無駄な力みが省かれて、流れるような美しい走り方になっている。

トレーニングで同じフォームを創り出すことは出来ない。
例え見かけ上同じにはなっても、「力みが抜けている」という根本を押さえることができていない。

スキルに話を戻すと、いくらビジネス書やセミナーで通り一遍の知識を学んでも、それらは「力んで」いる。
実地で経験を積み重ねて、上手くいかないこと・嫌なことを経験し続けて、うまくいくために形をちょっとずつ変えていく中で、力みは少しずつ消えていき、やがてスキルとして己の身につく。

やはり、実際を体験してみてこそ得られるものは大きい。