私の周りの企業研究者の方々を見ると、アカデミックでの実績を持っている人はむしろ少ない印象です。
むしろ、アカデミックでは活かせなかったその人なりの資質をフル活用している人が多いです。
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企業で求められるのは、ある程度のオールラウンダー能力です。
・ミスが許されない環境
・人と共同して仕事を進める
・自分ではどうにもできない変数が密接に絡む
補助エンジンの出力がある程度大きい人が活躍できます。
比べて、1点全振りタイプは、自分の意図しない所でダメージを食らってしまいます。
同僚への頼み方が乱雑だったり、上司への口調がぞんざいだったりすると、陰口や注意を食らいます。
それが精神的ダメージとなり、思うように前に進めなくなってしまいます。
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大学時代に実績がある人が少ないのは、淘汰の結果であるともいえます。
大学時代に「すごい」と評判になる人は、企業という得体の知れない領域に踏み込むよりも、アカデミックの世界に残り力を発揮したくなります。
大学の世界で威力を発揮する能力は、大きく分けて以下の3つと感じていました。
1. テストへの回答力
2. 発想力
3. デザイン力・プレゼン力
1.は、学部時代に威力を発揮します。
これが得意な人は公務員試験に流れる傾向にあります。
2.は、研究のテーマが「すごい」と思われるのに必要。
これが強い人はアカデミックの研究者に進みます。科研費も通りやすい。
3.は学会の発表賞やポスター賞をもらうのに必要です。
研究者になるよりはコンサルだったりデザイナーだったり、企業でも他職種にうつる傾向にあります。
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一方、企業の研究職に必須の能力は以下の2つと感じています。
1. 断固たる実行力
2. 着実に一歩ずつ検討を進める慎重さ
研究室では「バカ丁寧」といわれる方々。
1つ1つの操作から丁寧でミスがない。データの取りこぼしが無いよう同じ実験を納得いくまで繰り返す。そんな方々です。
私の一つ下の子で、絵に描いたようなバカ丁寧の子がいました。
1つの形質転換体を得て、その表現系を観察しただけの修論を出した子でした。
形質転換に使う遺伝子に欠陥が無いか確かめるために、何度もPCRを繰り返していました。
それも、電気泳動の写真もキレイなバンドが出るまで何度も。
その子の形質転換の中でコンタミは皆無(大抵は50%以上の確率でコンタミします)
修論には一つの論理的ミスもありませんでした。
上記の子は、今は某製薬企業に入社し、トップクラスの活躍を見せているそうです。
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ある世界で活躍する人に、以前の世界で思ったような実績が無いのは、ある意味自然な流れなのかもしれません。
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