僕が新入社員で高分子をやることになった時、一番困ったのが「教科書選び」でした
同じ思いを抱く新入社員の方も多いようで、「オススメの教科書を教えてください」とのご質問を何件か受けました。
私が使って良かった教科書を紹介します。

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まず読むべきは「Introduction to Polymers」です。
この本一番の長所は、とにかく「程良い」こと。
・高分子をやるにあたって押さえておくべき分野が全て盛り込まれていて、
・かつ理論の基礎をきっちり押さえられるくらいの知識深さ
です。

高分子の専門書にありがちな
・数式がひたすら並んだ章書きで、難解すぎてついて行けない
・大きな文字で平易に書かれすぎて、幼稚さを感じて逆に取っつきづらい
といった苦悩を感じることなく読み進められます。


数平均分子量、重量平均分子量といった基礎の基礎がきっちりと押さえられています。
また、相溶性のFlory-Hugginsの理論など、本格的に取り組むにはハードルが高いが知っておくべき知識の「さわり」が非常に分かりやすい。

数式が簡単なレベル(高校数学の知識があれば理解できるレベル)で混ぜ込まれているため、初心者の私でも数式による厚みを帯びたイメージを持つことができました。

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企業のR&Dであれば、高分子の合成・重合に関わることが大半です。
重合反応に携わる場合、「Principles of Polymerization」も読んでおきましょう。
こちらはモノマーからの重合反応に的を絞っています。

特徴としては、
・英語が平易で取り組みやすい
・ラジカル/アニオン/カチオン重合の全てを詳しく網羅している
・具体的な実験系・モノマー名を示しているおかげでイメージが掴みやすい


非常に助かるのが、「Q-eスキーム」など、重合挙動を予測する理論が体系的に載っている点。
数式が明記されているので、Excelで簡易計算ツールをつくって業務の反応に応用することができます。

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高分子の開発で近年のトレンドが「樹脂製品の水系化」です。
水系化された樹脂について学ぶのに適しているのが「コロイド科学」です。
特徴としては、
・日本語の教科書でとっつきやすい
・コロイド粒子に働く物理的な力を一つ一つ解きほぐして説明している

理解しやすかったのが、原子(nm)レベルのミクロの相互作用から順番に解説し、粒子間(μm~mm)レベルのマクロな相互作用で〆ている点。
ミクロな相互作用が目に見える系にどう繋がっているのか、スッと頭に入ってきました。

さらに、理論に基づいた定量的な考え方と、モデル図で示された定性的なイメージが程良いバランスで混在しているので、確からしさの高い感覚を掴みやすい。
具体的な実験系も載せられているので、自分が扱う系(水系か溶剤系か、など)と比較して考察しやすいです。
何より日本語なので、直感的に理解できるのが良いですね。

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入社して2年も経つと、勉強する余裕はほぼ無くなってしまいます。
僕自身、今は入社5年目ですが、自分の研究テーマ+部下の研究テーマでいっぱいいっぱい。
もっと知識を深めたいと切に思いますし、「新入社員のうちに勉強しておいて助かったな」とも感じています。

ぜひとも時間のある若手社員のうちに、いい勉強のスタートを切っておきましょう。